荒野の狼

仮面ライダー×スーパー戦隊 超スーパーヒーロー大戦の荒野の狼のレビュー・感想・評価

4.0
2017年の仮面ライダーシリーズと戦隊シリーズのレギュラーが共演する作品。タイトルにある「超スーパーヒーロー大戦」は、本作中に登場するゲームの名前で、これを作ったのは天才プログラマーの少年エイト。このゲームの世界と現実世界が結ばれることで起こる事件を描く。
全編を通して、仮面ライダーエグゼイドのレギュラー3人(宝生永夢 / 仮面ライダーエグゼイド こと 飯島寛騎、鏡飛彩 / 仮面ライダーブレイブ こと 瀬戸利樹、ポッピーピポパポ こと 松田るか)と、動物戦隊ジュウオウジャーのアム / ジュウオウタイガー こと 立石晴香が出番が多い。当時シリーズが放映されていた「宇宙戦隊キュウレンジャー」の主役ラッキーはゲスト出演程度の登場だが、感情を持たない人間型宇宙人ナーガ・レイこと山崎大輝が後半で重要な役割。
前半は、ゲームの世界と現実世界の中で、新旧の歴代のヒーローたちが、戦いを繰り広げるが、設定上、ゲーム上の戦いなので、きわめて明るく楽しく、敗者にも悲壮感はない。本作では、ゲームの天才である永夢が、ゲームから得た知識を生かして戦うなど本来の設定が生かされており楽しい。
後半は、喜怒哀楽の感情に乏しい少年エイトの救いがテーマ。エイトは生きる意味を見失っており、自らの病気の回復にも、現実世界が消滅しそうになることにも関心がない。エイトに対する大人の反応は様々。自分で病気を治したい意志のないエイトを見放す鏡飛彩、強く励まして説得しようとするポッピー、無表情なエイトにも自然に笑顔で接する永夢の3人だが、エイトの心は永夢の姿勢がわずかに揺らすのみ。一方、エイト同様、感情を持たないナーガ・レイは、エイトに自分自身の姿を見て深い共感を起す。世界が消滅しようとすることにではなく、エイトの心が動かないことに涙をはじめて見せるナーガ・レイに驚きの感情をみせるエイト。ここでは、同じ心の辛さを持ち本来は弱い立場の人のみが、真に、同じく辛い立場にある相手に寄り添う姿勢をみせることができることが描かれている。ナーガ・レイはエイトを救えるかというテーマで、後半の緊張感は高い。ヒーローものは、本来の対象は小学生であるが、本作の後半は少年エイトが鍵になるストーリー展開で、エイトに寄り添い、エイトのために戦う様々なヒーロー像が描かれている。ヒーロー映画の原点がここにあり素晴らしい。
戦闘シーンは、戦隊のヒーローはライダーに較べると、身体にフィットした薄いスーツと仮面というシンプルなデザインなためか、華やかなライダーに較べて細身で、戦闘シーンでは重量感がなく思えてしまう。新旧のヒーローが出てくる中で、特筆すべきは、仮面ライダー龍騎のレギュラーであった涼平が登場すること(現在は歌手の純烈のメンバーとして小田井涼平)。涼平は年齢を経た感はあるが、シリーズ中の相棒の「吾郎ちゃん」をセリフの中のみではあるが共演するなどして、シリーズのファンには嬉しい。
他には、昭和と平成の新旧の仮面ライダーアマゾンが登場するのもオールドファンを意識した作り(昭和ライダーシリーズでアマゾンの次のシリーズである仮面ライダーストロンガーも本作では活躍)。本作のオリジナルのキャラクターとしては、昭和の仮面ライダーを単に5色の色違いにしただけのゴライダーが単純明快で楽しい。
後半で仮面ライダーエグゼイドが巨大化するシーンがあるが、闘う相手がさらに巨大であるため、等身大のライダーとの違いが実感できないシーンになってしまった。仮面ライダーの巨大化というシリーズでは例が少ないユニークな大変身であっただけに、対戦相手とのサイズを揃えるなどの工夫が欲しかった。エグゼイドは歴代ライダーの中でもロボットに近い硬質な体型なので、巨大ロボとしてのエグゼイドの戦いが見たかった思いは残る。
荒野の狼

荒野の狼