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サマーフィーリングのhoteltokyoのレビュー・感想・評価

サマーフィーリング(2016年製作の映画)
4.2
夏のベルリン。サシャは恋人であり翻訳家のロレンスをベッドに残し、仕事場のアトリエへ向かうも突然倒れ、そのまま亡くなってしまう。取り残されたロレンスやサシャの家族は、突然の訃報に愕然とするも、ゆっくりと流れる時間の中で自分たちの生活を取り戻し、前を向こうとする・・そんな物語。

人を失った喪失感が、滴る水の波紋のように、周りの人間や家族に徐々に広がっていく様が丁寧に描かれている。そして3年間の夏を通じてこの出来事を振り返り、次第に自分たちの生活を取り戻していく。映画全体を通して悲しみに明け暮れているわけではない。ハンドボールを遊ばないか?と誘う中国人、女装して街に繰り出すホテルの支配人、俺はいつまでハンバーガーを作りつづけるのだ?と嘆くニューヨーカー。良い意味で悲観じみた心の氷をゴリゴリとすりつぶし、溶かし始める周りの人々。人は辛かった出来事を消すことはできないけど、人に支えられることで、辛かったことをマイルドに書き換えることができる生き物。愛する人を失うってみんなこんな感じなのだろう。

全体的に淡いマジックアワーのように優しい描写で撮られているだけでなく、トロンとしたLi-Fi音楽がなんとも心地よい。全ては”記憶”をテーマに、夢のような現実感を醸し出している。
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