emily

肉体と火山のemilyのレビュー・感想・評価

肉体と火山(2015年製作の映画)
3.5
小さな村で父親と2人きりで暮らす少女。心臓が弱く友達も居ない。そんな中で自分なりの些細な楽しみがあり、やがてほのかな恋心が行動力につながっていく。

その孤独を現す描写はオープニングの背中越しの健康診断から始まる。特にいじめにあってるわけではない。学校でなかったもののように存在が薄く、1人遊び、手遊びにふけっている。家では同じように1人の父親が横たわりテレビを見ている。多くは語られないが、彼女の心の寂しさと並行するように描かれる、父親の姿が印象的だ。彼女の唯一の存在理由が父親であり、それは彼にとってもそうなのかもしれない。

しかし彼女の見る夢ではいつも幼い彼女と少年が楽しそうにはしゃいでいるのだ。それは彼女の抱える闇の理由だろう。思っても戻ってはこない日々に囚われ、そこから出られないでいるのは父親も同じなのかもしれない。

常に幻想的な音楽と光りが寄り添い、回想シーンを泡の質感から水の中へ、暖かな日々に切り替え、眠りから、貧血からそこへいつもたどり着く。幸せなようでそこから冷めた時の空虚は言うまでもない。些細なことが彼女の背中を押し、その行動は確実に観客の心を掴んでいく。誰かの一言は時には誰かの背中を押し、自分のそれもまた誰かの背中を押してるかもしれない。複雑化してるのは周りではなく、自分自身なのだ。
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