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夜明け告げるルーのうたのinudaoneのネタバレレビュー・内容・結末

夜明け告げるルーのうた(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

3.11に想いを馳せてしまう、ラストに入るあたりからそういうメッセージを込めた作品だと思って観てました。

後で監督のインタビューなどちらっと見る限りでは全くそういったことに触れてないので、自分の感想はほぼ妄想であるようですが。

“あの時に人魚たちがいてくれたらな…”と思わずにいられない町の人々を救出する人魚たちの姿。
作りごとでも助け出される人たちの様子に心から安堵して心が救われた気がしました。

広報アナウンスの先輩の姿はあの時に町や人々を護るために行動した方々へのオマージュだと思いました。

その区切って話せ、とか水の浮き方など、時折ストーリーがもたつきかねない要素を丁寧に見せるところが逆に大切なことを伝えたい、という想いを感じたりします。

タコばあやおじいさんなど、愛するものを奪われた悲しみと憎しみは歳を取るまで変わらず在り続ける。
それは災害からたった6年かそこらしかたっていない被災者の方々の気持ちもそうではないかと。

そして恋人、母親が還ってくるのが遅すぎないか、あんまり待たせるのは逆につらくないかと思ったのですが、“頑張って年寄りになるまで生きていればいつか愛する人が海の向こうから人魚になって迎えに来るかもよ”。
そんな夢を語っているのかとも思いました。

たとえありえないおとぎ話でも大きく空いてしまった心にはこういうものが必要ではないかと、文化・芸術の役割の一つだと思っています。

心を開いて前に進もうとする主人公の姿を通して、立ち止まってしまう心の背中を押そうとする作品だと思い、今あえて発信したいメッセージを持って創られた作品なのかとか、エンドロールで考えながらすげー泣いていました。

事前情報をできるだけ入れずに見たので勝手な思い込みをしたかもしれませんが、良かったです。

このような作品の後、湯浅監督には「マインド・ゲーム」(原作がものすごく好きでした)的なぶっとんでる系をぜひもう一度やってほしいと願います。
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