万引き家族のinudaoneのネタバレレビュー・内容・結末

世の中には、“あなたの言うことは正しい、正しいけど、でもさぁ…”と思うことがたくさんあって、この“でもさぁ…”を見事に形にした作品だと思いました。
この家族（仮）を形成する中心となってる夫婦（仮）は間違いなく社会的にダメな人達だし、自分の近所にいたら絶対に寄り付きたくないと多分自分は思ってしまうような人達なのだけど、この家族の築いている“絆”だけがあまりにも重く、純粋に輝いていて、人間的には観てる自分のほうが全然ダメな奴だよなぁと勝手に打ちのめされて映画館を出る羽目になってしまいました。
ストーリー的には大人たちはまあ、そうなっちゃうよねえといった展開なのだけれど、ひたすら心配になってしまうリンちゃん、ラストは何とか自分で壁の向こうを選択できる意思を示すようなカットで終わってよかったです。
その先の人生に何も明るい要素は見えないのだけれど、でも実の親のいいなりに囚われたままではないだろうとかすかな希望が持てる終わりでした。
あくまでも個人の考えですが、創作されたものを現実の法律で量って評価するのは野暮だと思います。
自然界には法律とか存在してなくて、人間が出来るだけ安心・安全に社会を形成出来るように“勝手に”作っているのが法律とか決まり事で、100年も経てば常識も変わるし、法律は変えてもいいもの。
法律を基準に人を推し量るのは命や人生を二の次にした危険な行為だと考えています。
そんなことを考えさせる点で社会的にも重要な作品。
そして、この作品がパルムドールを獲って本当に良かったと思います。
正直地味なテイストなだけにこれだけ話題になっていなかったら自分は多分映画館で見ていなかったし、平日にもかかわらず満席の盛況ぶりに驚かされる状況もなかったでしょう。
いい体験をさせていただきました。