「私にはわからない」
何度か出てくる印象的な台詞だ。
何故こうなってしまったのか。
これからどうすればいいのか。
それは余りにも多すぎて、重すぎて。
ーーー結局のところ、人間関係は。人生は。
ひとつの原因があってひとつの結果が生まれている訳ではない。
連なっているものなのだ。
切り取るなんて不可能だ。
つまりこれは［映画］そのものへの挑戦だ。
この『ワイルド・ライフ』という映画以上に広がりのある登場人物達の人生。
それは確かにポール・ダノとゾーイ・カザンの脚本に、キャリー・マリガン、ジェイク・ギレンホール、エド・オクセンボールドらの素晴らしい演技によって裏打ちされている。
だからこそ［映画］の中で起こる事柄に対して、彼女らも「わからない」のだ。当然、観客だって。
では、あまりに複合的な要因が絡み合った“人生”とは「わからない」ままなのか？
それは違う。
やはり切り取ることは可能なんだ。
ただしそれは、観る者の想いを。
被写体の連なりをフレームの中に収めて、どこまでも自分の瞬間を切り取るんだ。
映画も写真も、今この眼で見ているあの人やその人だって。自分のフレームに収めたら、それは永遠だ。
幸せな瞬間を残すために。
1、2、3…
