ぴのした

羅生門のぴのしたのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
3.7
芥川龍之介の原作とはかけ離れているが、原作と同じく「人の身勝手さ」というテーマが通底している。

彼らの話はみんな芝居がかっていて、哀れだったり男らしかったりする。最後の目撃者の男の話が最もみんなカッコ悪かったので、真実はそんなもんなんだろうなと思う。

ただ、3人の話みんなわりと似たり寄ったりで混乱した。

「こんな話があってな…」と、物語が多重入れ子になっていく構成も面白い。

映像的にも面白い。男が山の中を歩くだけのシークエンスを横からレーンで追ったり、木を見上げたり、後ろ姿を追ったりと凝っている。

音楽もやけに派手で、斬り合いのシーンでの無音やセミの鳴き声だけの演出との対照をクッキリ感じた。

てか羅生門のセットすごくない?これを終戦から5年後に作れるのやばい。

荒廃した羅生門は終戦後の日本とどこか重なる気がして、そういう時代背景もあって、「誰も身勝手で信じられない時代だけど、それでも人を信じたい」というテーマでこの作品を作ったのだろうか。