KnightsofOdessa

春の水のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

春の水(1989年製作の映画)
3.0
[] 60点

1989年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ツルゲーネフ『春の水』映画化作品。スコリモフスキとしては『勇将ジェラールの冒険』以来20年ぶりのコスチューム劇。いきなり『オルメイヤーの阿房宮』のラストみたいな船出シーンで幕を開ける。そして、老齢のロシア人貴族サーニンは、若かりし頃の三角関係を思い出す。帰国途中のイタリアで昏倒した少年を救った彼は、少年の姉ジェンマと恋に落ちた。しかし、彼女には尊大な婚約者がいた。三人で行楽地へ行ったら、今度は旧友の魅力的な人妻マーリャに出会い云々。物語は退屈だが、気球のシーンやジプシーダンスのシーン、サーニンとマーリャが別れる朝日のシーンなど印象的なシーンもチラホラ。原作には登場しない酔っ払い紳士ヴィクターをスコリモフスキ本人が演じ、そのままデウスエクスマキナとしてカオス的な展開となった終盤の物語を終幕へと導いている。このラスト10分のカオス具合が非常に良い。実らぬ恋と離れる人々の記憶がペストの狂乱みたいなお祭り騒ぎと自身の道化師化として転換されるのが良い。
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