Yukenz

光州5・18のYukenzのレビュー・感想・評価

光州5・18(2007年製作の映画)
3.7
昨日見た「弁護人」に触発され、同時期に韓国で起きた民主化要求と軍事政権との衝突に関する作品をチョイス。

時は1980年。光州は韓国の南西に位置し、同緯度の半島東海岸には「弁護人」の舞台となった釜山がある。
こちらも実話に基づく映画であり、近代韓国史を知るひとつの教材にもなる。

冒頭、緑濃い田舎の並木道を一人の青年がタクシーをゆったりと走らせる。光州にタクシーとくれば、2017年の「タクシー運転手 〜約束は海を越えて〜」を連想するところだ。

序盤はかなりコミカル調に話が進むので、あれっ?と思ったが、このたわいないシーンこそが後の非情で凄惨な闘争シーンとの対比になっているのだと気付く。

戒厳令への抗議と民主化要求として学生デモが活発になるなか、軍隊は武力でデモを押さえ込む。近くにいた無抵抗な一般市民をも暴徒とみなし容赦なく鉄槌を下す。

同じ人間、しかも同じ民族でありながら、軍隊が無差別にこのような暴挙に出るとはとてもショックで、やりきれない思いに胸が苦しくなる。

そんな状況にあって、軍の暴走から市民を守ろうと、退役した元大佐が先頭に立ち市民軍を編成するなど、軍に身を置いた立場でも事態を冷静に判断し民主化のために身を捧げた人がいたことは忘れてはならない。

家族を守り市民を守り、子どもたちによい国として引き渡したいとの想いから闘争に参加し、そして多くの命が失われた。
武力を行使するだけでは悲しみが増やすばかりだ。
人類はいつまでも同じことを繰り返している。残念な事だがこれが本性なのか。

この悲劇を繰り返さないためにも、少なくとも事実を後世に伝えていかなくてはいけないだろう。史実を映画として残してくれた製作陣と役者たちに敬意を表したい。
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