ぐるぐるシュルツ

サスペリアのぐるぐるシュルツのレビュー・感想・評価

サスペリア(2018年製作の映画)
4.3
躯体が流転する、
次の体勢に変わる、
重力を押しのけて、
二つに引きちぎられる。

〜〜〜

原作は未鑑賞、ほとんど予備知識なしで挑戦したので、あくまで自分なりの解釈です!


魔女軍団の継承者をめぐる物語。
それは奇しくも、ベルリン内部の分裂に重ね合わせられる。
一つのものから二つのものが生みだされると、
痛すぎるほどの混乱と苦難をもたらします。

そして、その逆のプロセスも然り。
運命(重力)に抗って、二つのものが一つに戻ろうとする(母と一つになる)とき、それは暴力・残虐性を伴うのです。

(ちなみに、男は、身体的レベルでの大きな分裂を経験できない=出産)


画面一杯に捻れる女性の体。
痛い、けれど美しい。
同じように、
恥や罪の意識が生んだ嘆きは、
痛みと表裏一体にして、そこに美が存在する。
それを無くして、醜く欲望にまみれるなら、それこそが死だとでもいうのだろうか(第六幕)

でも、果たしてそれはどこから来るのでしょうか。
魔女という虐げられた民族の嘆きなのか、
悲惨な大戦で犠牲になった民族の嘆きか。
それとも今を生きるマイノリティ、
自己の内に抑圧された感情か。


ダンスと魔術、秘密の部屋での徘徊、スージーの悪夢、博士のトラウマ、眺めてくるだけの人々。

とにかく全編で残酷なまでに、
「静」と「動」が繰り返され、徐々に入り乱れていきます。
観ているうちに、
「動」の中にこそ「静」を、
「静」の中にこそ「動」を、
強烈に感じてしまうから、
流石の映像表現としか言いようがないです。


ここまでの精微かつ生々しい描写と、
奇妙にポップな挿絵的な文字イラストの差が、
不気味だけれど光っていますね。


物語的には、スージー自体を巡って解釈が分かれそうです。

いやぁ、でも、やっぱ
普通に怖かったです。
しっかり目を閉じないように頑張りました。
隣に座って観ていたおばあちゃんは、震えてました。
あなたも魔女ですか。