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DESTINY 鎌倉ものがたりのrollinのレビュー・感想・評価

DESTINY 鎌倉ものがたり(2017年製作の映画)
4.0
ベタやけど自分は北鎌倉周辺が好きで、年一くらいで円覚寺や明月院にお邪魔しています。
そんでこれもまたベタやけど、自分は『学校の怪談』シリーズが大好きで、今思えばあの時代はインターネットが普及する前の、最後の曖昧で寛容な時代だったと思う。oasisのネブワースのライブと一緒。

僕は他の山崎監督作品や原作にもほぼ触れたことのない門外GUYやけど、本作を観た限り、監督のタッチはそんな古き良きインターネット前時代の感性に近いと感じました。

街全体を抑えた引き絵のなさ。
小っ恥ずかしくなるような演者の芝居。“鎌倉ものがたり”を冠しているこの映画は、ほとんど鎌倉の魅力を紹介する気配は無いし、緩慢且つ冗長なテンポの悪さはいただけない。しかし、恥をかき続けることは、独特のグルーヴを生み出すことでもあって、これは必要恥だ。

堺雅人の陰と高畑充希の陽。
逆にグリーンバックが透けて見えるような映画全体の白々しさは、この物語の性質に合っていると思う。そしてそれは図らずとも、『学校の怪談』の懐かしいクオリティに共通するものがあった。

鎌倉がイマイチだったのはこの為とでも言わんばかりに、黄泉の国のビジュアルは面白い。東南アジアの水上マーケットのような地盤に、鴨川河川敷のような家屋が、ブラジルのファベーラのような立体的スラムを形成しているという、あり得ない風景。でもそれが逆に黄泉っぽい。

たとえば夕闇がかった路地に潜む気配。おばあちゃん家に泊まった時の、日本家屋ならではの由緒ある怖さ。それは同時に、そこに何かいて欲しいという期待でもあった。
ポケモンとCGとインターネットが渡した、曖昧で不明瞭な時代への引導。情報の区画整理—その反動として昨今妖怪ウォッチが生まれ、山崎監督がこの映画を撮ったのならば理解出来る。ディズニー、ピクサーのガチガチで完璧なおとぎ話ではなく、ダサい大人が作った屈託のないスキだらけの寓話を愛でる余地がまだあることが嬉しい。
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