ぼあのん

ハウス・ジャック・ビルトのぼあのんのネタバレレビュー・内容・結末

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

ホアキンとギャロが暗闇の中でダンスしながら首を吊るといった妄想劇。
では無くて、殺人をアートや救済という彼なりの口実による観点から、人殺しを積み重ねたシリアルキラーの精神論を紐解く物語。

人の価値を決めるのは生前では無い。
死後だ。ふーん。

しかしながら人間は死ぬと当然の如く腐敗していく。当たり前な自然の摂理なので私ならばなるべく一刻も早く誰かに処分して欲しいと願うばかりである。
その点、葡萄は徹底した管理の中で腐敗させる事により生前よりもぐっと糖度が上がり、本来持っていた味に更なる深みを保たせ昇華させる事ができる。彼はそういった価値観が人間にも当てはまるのだと作中何度も訴えかけてくるのだが、。とにかくシリアルキラーの理屈を聞くのは只々眠い。


猛烈なキチ○イに主導権を握られると人は己の無力感に逆に身を委ねる。
いくら声を上げようがこの世界は弱者を救ってはくれない。というよりも誰もその存在に気付こうとしない。
絶叫も虚しくこの世からは幾つもの数に含まれない哀しい命が、日々忽然と消えていく。

今この瞬間にもこの世界の何処かで当たり前に起きている不条理で過酷な現実のど真ん中に叩き込まれる様な擬似体験ができたような気がした。

見始めてから四日も引き摺ってしまったせいもあるが、急にラストの宗教臭さとオカルト感が立ち込めてきたせいでリアリティが底をつき、現実へと引き戻され覚めてしまった。。

乳房で作った皮財布のインパクトよ。
お会計であれ出してきたら、全部奢りであろうと即連絡を断つわな。