こたつむり

全員死刑のこたつむりのレビュー・感想・評価

全員死刑(2017年製作の映画)
1.0
はい。最低スコアです。
これは物語がつまらないから…ではなく。題材の調理方法を受け入れることが出来ず、その点がマイナス評価となって良い部分を帳消しにしてしまったから、です。それさえなければ…3.5~3.9の幅に収まっていたと思います。

その問題とは。
中途半端な形で“コミカルな演出”が差し込まれる部分です。冒頭から「実際に起きた事件を下敷きにした物語」と謳っていますからね。どうしても、毒々しい演出の向こう側に“現実で亡くなられた被害者たち”を想起してしまったのです。

勿論、これは監督さんが意図したところでしょう。凄惨な場面を“青年コミック”のように露悪的に描くことによって、暴力に対する嫌悪感を際立たせたかった…のだと思います。

しかし、それならば。
針が振り切れるほどに“凄惨”かつ“ポップ”に描いてほしかったですね。そうすれば、現実と虚構が切り離され、混じり気なしの暴力が浮き彫りになったと思うのです。

ただ、製作者側の視点に立ってみると。
現実と虚構を切り離す考え方は“逃げ”なのかもしれません。確かに事件の根底に流れる“理不尽さ”を描くためには、現実を正視する必要がありますからね。「メンチ切ったら目を逸らすな」なのです。

だから、僕も画面から目を逸らしませんでした。負けず嫌いなので「途中で目を逸らしたら…負けだッ」とムキになってしまったのです。

でも、負けましたけどね。
餌付くような気持ち悪さは乗り越えましたが、作品の熱量に押し切られ「実話の一言がなければなあ」なんて“ぬるい”考えに至りましたので…あー、悔しい。あまりにも悔しいので、小林勇貴監督の他作品でリベンジしよう。

まあ、そんなわけで。
映画と観客がガチンコでケンカする作品。
かなり人を選ぶ作風なので“暴力描写”に抵抗がある人は避けた方が無難です。

ちなみに“暴力描写”の方向性として連想したのが『時計仕掛けのオレンジ』。本作の方が荒削りですし、近からずとも遠からず…という距離感ですが、指し示す方向性は似ていると思います。勿論、着地点は全く違いますけどね。
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