ミーハー女子大生

孤狼の血のミーハー女子大生のレビュー・感想・評価

孤狼の血(2018年製作の映画)
4.3
この作品を観る予定はありませんでしたが(バイオレンス作品は個人的にそんなに好きではないので)、ここでの評価が意外と高いので観ることにしました。
途中までは、よくありそうなヤクザと警察のハードボイルド作品かと思い「過大評価され過ぎ?」などと思っていましたが、観終わる頃には・・・・・・
いやあ、さすが原作が日本推理作家協会賞を受賞した小説というだけあって、本当に大切なことは何かということがしっかり描かれているなあと思いましたし、一見破天荒に思える役所広司扮する大上の行動には芯も筋も通っていることが分かり、本当に強い男、カッコイイ男とは何かを改めて考えさせられ、魂も揺さぶられました。

また、こうしたヤクザの出てくるバイオレンス映画が元々好きな方は他人から薦められなくても劇場へ足を運んだりするでしょうけど、むしろこの作品は、ヤクザの出てくるようなバイオレンス作品は苦手といった女性の方などにこそ観て欲しい作品だと思いました。
というのも、男性が原作や脚本を書いたバイオレンス映画って、女性の立場や存在感がおざなりにされることも少なくないと思うんですけど、この作品は女性が原作を書いただけあって、女性の立場や存在がおざなりにされているようなことは決してないですし、主役は男性ばかりの物語に見えても、女性がかなり重要なカギを握っており、その点もしっかりと描かれているんですよね。
しかも、本当に強い男、カッコイイ男とは何か?について、これは男性も女性も性別関係なくすごく考えさせられる作品だと思います。

例えば、社会的地位(肩書き)や経歴、腕力(体力)や収入(資産)などといった目に見えるものばかりを自慢したり、それをプライドだと思っているような男なんて、個人的ではありますが私自身は大した魅力を感じませんし、自分第一にしか生きられない人間なんて、どんなに偉そうにしていても、結局はちっぽけでくだらない存在だとさえ思います。
そうではなく、本当に強くてカッコイイ男というのは、他人のことや社会全体のことをきちんと考えられる人間であり、これ以上はネタバレになるのであまり詳しくは書けませんが、この作品の中で大上を通して描かれているように、他人や社会のために「綱渡り」ができる人間ではないでしょうか。
そういう人間がいなくなってしまったら、その社会は地位や金、暴力に勝る権力者の思うがままになってしまうと思います。
グロいシーンなどがいくら描かれていようとも、私がこの作品を高く評価するのは、そうした大切なことをきちんと訴えかけようとしているメッセージがしっかりと伝わってきたからです。
どんなに暴力がリアルに描かれていたとしても、そうしたことが伝わってこなければ、せいぜい☆は3つにとどめていたでしょう。

一方、☆を下げる要素があるとすれば、次回作構想が見え透いてしまった点くらいですかね。
ただ、それは完全に個人的な感想でしかないので、☆を下げるほどのものでもないんですけどね。

いずれにしましても、この『孤狼の血』という作品は、従来のようなヤクザの出てくるバイオレンス映画ではなく、最後までしっかり観ると、きちんと筋が通った魂のこもった名作だということが分かると思います。
役所広司の演じた大上刑事のような存在は、やっぱり今の世の中、どこかで描かれて影響を与えないと社会全体がダメになっちゃうでしょう。
一体、何のために法律があり、誰のためにどのように行動しなければならないのか・・・・・・
そうしたこともロクに考えずに表面的・形式的なコンプライアンスを口にする奴らなんてクソっくらえで、そういうヤツらは結局自分のことを第一にしか考えられない人間ばかりでしょうから、信用に値しないと改めて感じさせられましたし、今まではこうしたバイオレンス映画を苦手としてきた方々にも、是非一度見ていただき、その熱い思いを感じて欲しい作品だと思いました。

ストーリー 4
演出 5
音楽 5
印象 4
独創性 3
関心度 5
総合 4.3