七瀬

孤狼の血の七瀬のレビュー・感想・評価

孤狼の血(2018年製作の映画)
5.0
2018年、今をときめく若手俳優松坂桃李を使ってこんなに昭和らしい作品を作れるのか、と度肝を抜かれた。

まず、時代設定が考証に忠実なのはもちろん、昭和天皇の体調をテレビで流しているなど、節々に漂う昭和末期の描写が素晴らしい。
80年代を描いた作品にありがちな、服装や髪型への違和感もほとんど感じられない。
ヘビースモーカーな刑事というのは昨今の映画やテレビドラマではとんと見かけなくなったが、この作品ではきちんと取り入れてくれているのも粋である。

だからと言って内容がゴリゴリの昭和というわけではなく、現代人の好みにマッチしたストーリー展開だ。この塩梅が絶妙である。
反面、いわゆる昭和任侠映画そのものを求めてしまうと期待はずれだと感じてしまうかもしれない。あくまでマル暴の話だからだ。
警察とヤクザ、その間に綱渡りのような状態で立ち、どちらに転ぶことも許されないマル暴の姿に惹き付けられる。

大学上がりで絵に描いたような正義感を持つ日岡(松坂桃李)と、現場叩き上げの大上(役所広司)の正反対なコンビがなんとも素晴らしい。
大上のいわゆるマル暴「らしい」捜査方法に嫌悪感を示す日岡が、ある時を境に綺麗事を捨て去り、変容する様が見事である。
特に序盤と終盤で大きく変化する松坂桃李と演技は鳥肌が立つほど見事だ。

『仁義なき戦い』の姉妹作と銘打っているため、少しだが伊吹吾郎が出演しているのも見どころだ。流石、役者としての風格を見せつけてくれる。

全体的にボリュームが多く、濃い。
見応えがありすぎる作品。
R指定はエロよりグロ強め。苦手な方は要注意だ。
七瀬

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