やんげき

乱世備忘 僕らの雨傘運動のやんげきのレビュー・感想・評価

乱世備忘 僕らの雨傘運動(2016年製作の映画)
3.4
印象的だったのは、デモ側は非暴力を貫き、権力側はしばしば暴力に訴えていたこと。”非服従”という力強さは2010年代という、人間が長い歴史の中で培ってきてやっと芽生えた社会的人間が持つヒューマニティなんだと思えた。

理知的で行動力のある、普通の若者が起こしたデモ活動が「雨傘運動」だ。
「純粋な一人一票の普通選挙制を目指した運動」という事しか知らなかったけれど、中身は激しい熱量や怒りよりも、むしろ諦観に満ちていて、それでも自分達が動かなければ未来は変わらないと信じる人々が「意味があるか分からない何かをし続ける」話だった。

選挙や未来の自国のことを思うと、日本人としてズキリと痛む部分がある。
僕らは、選挙にさえ行き僕らの声を拾う人の事を指名するだけで良いのに、それすらせず国に静かに絶望している。
もちろん、香港の状況ははるかに切迫しているけれど、それゆえに香港という都市はとても眩しく感じられた。
こんなにきちんとした考えを持った普通の若者が育つ場所なのだ。

この運動から4年、おそらくこの時「デモには参加できない。俺達がデモをして捕まってしまったら仕事をクビになって家族を養えなくなる」と言っていた人も「逃亡犯条例」改正案を巡る200万人規模のデモには参加したのだろうか。

「何をすると捕まるのか明らかではない」という部分に香港中の人々が反応したとしたら、本当に賢く力ある民衆だと思う。
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