Ginny

ファースト・マンのGinnyのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
3.7
『セッション』『ラ・ラ・ランド』と完成度の高い作品で楽しい映画体験をさせてくれるデイミアン・チャゼル監督の最新作と聞いたら行くしかない!と思い鑑賞。

宇宙は好きじゃなくて、知識もあまりない。
見たことある映画は『ゼログラビティ』『インターステラー』『アルマゲドン』…とかくらいで、宇宙好きじゃないというより、苦手…、息苦しいの私です。

本作は人類で初めて月面着陸を果たしたニール・アームストロングを中心に描かれたドラマ。
この人は生きて地球に戻った、その事実が怖がりの私の拠り所でした。

事実として広く世間的に認知されていることは、「アームストロングは月面着陸した。」
でも、この一文でどれだけの真実が伝わり切るのだろうか?
一面だけであり、傍から見れば全く知られない計り知れないことが多くあったのだろう、それがこの映画を見て成程良くわかった。
宇宙飛行士の家族の人々の苦労、困難、宇宙開発の過酷さ。
成功の背景にある、苦々しい出来事の数々。
成功体験だけにフォーカスして、アクションぽく宇宙を舞台で作ってみました!宇宙を舞台にドラマ作ってみました!という趣きではなく、宇宙へ挑戦をし続けた人々を描いたドラマ、でした。
この違いが伝わりますでしょうか。
宇宙が舞台なのではなく、一人の人間が中心であり、地上が舞台であると感じ、そこが良いと思いました。

チャゼル監督は哲学を持って、映画を製作していると感じました。
上辺だけのストーリー、原作を淡々とつなぎ合わせるのではなく、一つの物語で映画を作るときストーリーの流れの中で描きたい事実に対して彼なりの考え、意見をもって描いている、と。
そして彼なりの哲学を持って製作するけれど、台詞で名言しない、映画の後半は映像と演技で魅せているように見受けられます。
だからなのか彼の映画を見た後は、映画のストーリーを楽しんだだけではなく、余韻が感じられ、考えてしまいます。受け取り方は鑑賞者にゆだねられ、どう思う?と考えるのではないでしょうか。
彼の作品を3作品見て、そう思いました。

私が初めて見たチャゼル監督作品『セッション』でおっと思ったのは、画角の捉え方?画面の作り方。真っ暗な中、真ん中のドア等スペースから光が漏れて、その中の人物の動きを捉えるといったような。
そういった撮り方は本作でもちょこちょこ出てきていて、監督らしさなのかなと思い嬉しくなりました。
それとメインテーマの音楽がめちゃめちゃ良かったです。
ジャスティンハーウィッツは、セッション、ラ・ラ・ランドとタッグを組んできたんですね。チャゼル感が出ていて良かったです。

ただ、宇宙という、暗闇と実際に撮影できないものをどう魅せるかにおいて、動きを大きく加えるとか、あ これほかのSF映画に近しいかも、というシーンを見ると、チャゼル監督のオリジナリティを出すうえで宇宙という題材は難しい(相性が良くない?)のでは?と少し思ってしまった。
また演技面においては私はライアンゴズリングもクレアフォイも、持っていきたい方向性がちょっとぼやけているというか、2人の相乗効果がそこまで出ていない、ミスマッチ?とあんまりだったのですが、逆にこのキャスティングだからこそ、演技に注視せず全体をを見れるのかな?とも思ったり。いや、それは監督の演技指導次第なのかな?
ライアンゴズリングってシリアス不向きなのかもと思ってしまった。
でもあんまりガチガチの役者持ってこられてもチャゼル感が出ないからやっぱりライアンゴズリングだなと一周回って思いました。

なんにせよチャゼル監督の次回作がめちゃめちゃ楽しみです。
宇宙を漠然と怖いと思っていたけれど、宇宙探索において多くの人が苦しんで努力して耐えて必死に紡いできた。
その歴史を垣間見て、人間ってすごいなと思いanother skyの山崎直子さん「宇宙」の回を見直しました(笑)
映画を見た後に、映画のことを考えて過ごすのが、好き。
映画っていいな~とぼんやり思えて幸せです。
この監督は財産です。
Ginny

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