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マッドバウンド 哀しき友情のBATIのレビュー・感想・評価

4.2
単に米南部のレイシズムや告発の物語ではなく、違う戦場だけど同じ地獄で生きた二人の男の心の繋がりをもって連帯、隣人愛を描かれていた。ギャレット・ヘトランドとジェイソン・ミッチェルの二人がいるシーンに存在するものも私は愛だと思う。最後まで観る価値がある。

メアリー・J・ブライジが助演女優賞でオスカーノミネートされているがこの作品のMVPはキャリー・マリガンだろう。愛でられる女という出で立ちではなく、化粧の仕方も忘れたような枯れた表情だった。「マッドバウンド」は彼女のベストアクトの一つになるはず。

ギャレット・ヘトランドは「オン・ザ・ロード」がとても好きなのだが、「マッドバウンド」の彼はあの時の感じに近かったというか超えたかもな。この人はなんか「ほっとけない男だが持つことが出来なかった男」というのがとてもよくハマる。

そして本作に感じたのは単なるレイシズムだけではなく、保守的な年代を生きた世代たちとの断絶だ。そこで生きることしか知らない老いた父親たちは新しい文化、ストレンジャーを許容することはできない。同じ場所で生き続ける彼らにとった戦争で人を殺すことも勲章でしかない。あそこで描かれていることは現代と何ら変わりない。変わることが出来ないのは自分の居場所を守り続けようとするからだ。だから排外が行われ続ける。「マッドバウンド」では差別=悪というレイヤーだけでなくそのメカニズムも表しているように思えた。
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