このレビューはネタバレを含みます
シェイクスピアのマクベスに絡んだ話かと思いきや、『ムツェンスク郡のマクベス夫人』という小説の映画化でした。ウィキであらすじ読んだら、原作のヒロインは弱さもあってもっと人間的だった。対する本作のフローレンス・ピューは化け物。(褒めてます) たぶん17歳の無垢な若妻が魔物に変貌を遂げるという一種の恐怖譚なんでしょう。
原作者のニコライ・レスコフはロシアの作家ということで、お話もロシア味を感じる。邪魔な他者をあっさり殺してしまう、生かしておくとヤバいとなれば相手が子どもだろうが容赦ない。この辺のドラスティックな展開と冷徹な仕打ちは、かの国で繰り返されてきた政変の顛末なんかを思い起こすと頷けてしまう。
『チャタレイ夫人の恋人』みたいな話でもあるけど、エロスよりタナトスの匂いがして、ちっともロマンチックじゃない。ピューちゃんはいくつもの屍を踏み越えて最強(最恐)女子になる。ソファにどっしりと座った正面ショットのラスボス感に震えた。