ぐるぐるシュルツ

コロンバスのぐるぐるシュルツのレビュー・感想・評価

コロンバス(2017年製作の映画)
4.4
理由は分からないけれど落ち着いて。
それが今日の私を支えていて。

〜〜〜

数ヶ月前に予告を見た時から完全にマーク。
愛すべき”ガール・ネクスト・ドア”のヘイリー・ルー・リチャードソンが主演。

なんていう素敵な役なのだろうか。
派手じゃないけど私的哲学を持っていて
ただボケッと時間を過ごしていく姿が
まるで人生と黙々と対峙しているかのような女子。
いたよな、そういう子。魅力的な。

〜〜〜

小津リスペクトの構図が極まる映像たち。
あの棚とあの柵とあの椅子の縁が平行で。
あの建物とあの窓とあの塔が平行で。

無機的なモダニズム建築とその構図で整然と描かれるコロンバスに、人間だけが有機的にぬるぬると動き回る。
そして、あの激情のダンスシーン。
画面全体に、それまで世界を支配していた「直線」が消える瞬間。緩急がたまらない。

情動は弧を描く。
川や木々や雲と同じように。

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なぜこういう構図で描くのか。
私達の、世界の見方を変えようとしているのか。

中盤、建築の捉え方を語る場面で、
あぁ、これはそのまま、映画の捉え方だなぁ、
とぽっと気づかされる。

豆知識を沢山知っていようが
精神的な隠喩を感じようが
それは単なるこじつけかもしれないね。

どうしようもなく辛い時や
今何を本当にすべきなのか見失う時。
この作品のような映画たちが
僕を落ち着かせてくれたし、
僕を支えてくれた。
そして新しい世界の見え方を教えてくれた。

影響されやすいから、映画館を出ると、
いつもの風景に見入ってしまったりして。

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親の死を恐れ離れられない者と
親の死を待ち早く離れたい者。
親を助ける者と親に助けられなかった者。
何かが急速に変わっていく様が描かれているのに、
その空気は限りなくゆっくりと流れていく。
すごく好きだった。