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アイスと雨音のKUBOのレビュー・感想・評価

アイスと雨音(2017年製作の映画)
3.6
東京国際映画祭16本目は、日本映画スプラッシュから「アイスと雨音」。

松井大悟監督は「アズミ・ハルコは行方不明」が徹底的にダメだったので、本作も「どうかなぁ?」とおっかなびっくり鑑賞、、、したのだが、これは良かった、すごかった!

ワンショット撮影は「バードマン」以降大流行りで、もういい加減食傷気味ではあったけれど、ここでは更にもう一捻り加えて、すごいクリエイティブなものになっていた。

劇の練習をしているかと思えば、突然「劇中」に入り込む。このタイミングが画面サイズの切り替えによって知らされるのだが、そこに気付くまではちゃんと整理して見れないので混乱する。もう一度見直したいくらいだ。

撮影はワンショットでも、数週間前の練習風景から「擬似本番」を挟む度に時間が大きく経過し、それを繰り返して本番の舞台まで繋がる。

エンドロールでカットがかかり、舞台上で抱き合って泣くキャストたちの姿に、いったい何度目の撮影でOKが出たのか聞いてみたくなった。役者・スタッフ含めて並大抵のことではあるまい。

映画というより「演劇」的。練習を含めた若い劇団のドキュメンタリーを、複雑に入り組んだ構成をワンショットで撮るという大実験的アート作品。

主役の森田想は決して美人ではないが、芝居が蒼井優を思わせる独特な魅力がある。また、突然入り込むあばれる君みたいなラッパー(「MOROHA」)が、これまたすごい効果的! 彼らだけは実際には存在しない設定なんだろうが、ナレーション代わりにラップを使うというアイディアが秀逸だ。

松井大悟、やはりすごい才能だ。恐れ入った。
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