このレビューはネタバレを含みます
手紙は届かない。けれど、手紙とは出すやいなや、書き手にひとつの返信を与える。手紙を出すことではじめて、彼の世界が仕切り直されるのだ。ヴァレリオにとって馴染みにくかったトリノが「はじまりの街」になるまでのお話。
このくらいの年頃の子にとって、大人の世界にはびこる欺瞞や嘘の悪臭は耐え難いものだろう。愛すべき親、尊敬できる大人、恋い焦がれるあの人。そうした人びとの、高潔さや純真さからの隔たりをだれが責められるだろう。そして、それでもなお世界は素晴らしいのだと、ヴァレリオは気づくのだ。