回想シーンでご飯3杯いける

あさがくるまえにの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

あさがくるまえに(2016年製作の映画)
4.0
物語の中に臓器移植の話が出てくる映画は何本も観て来たと思うけど、よくよく考えてみれば、それら全てが難病に立ち向かう患者や家族を描いた人間ドラマであったのに対し、本作は臓器移植そのものがドラマの主題という点でかなり斬新だった。

更に通常の難病物ので扱われる臓器移植は、臓器を提供される側のドラマであって、それがどこから提供された物なのか触れられる事はない。対して、本作は臓器を提供する側のドラマが中心。つまり主人公は脳死状態なので台詞がない。更に言えば、本作における主人公は脳死状態の人間ではなく、臓器そのものなのかもしれない。脳死患者とその臓器を見つめる肉親や担当医師達のやりとりが、言葉を持たない主人公の人となりを描き出していく。

派手さはないが、他に例を見ない斬新な命のドラマ。ピアノの独奏による音楽も素晴らしい。一見の価値あり。