みかんぼうや

きっと、いい日が待っているのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

4.0
デンマーク映画って、なんでこんなに素晴らしい作品が多いのだろう。また7~8本程度しか観たことはないですが、おそらく全て★4.0以上をつけています。もちろん評価が高い作品を選んでいるとはいえ、「偽りなき者」、「デンマークの息子」、「わたしの叔父さん」、そして先日観た「ヒトラーの忘れ物」など・・・フィクションから実話ベースまで本当にクオリティが高い。

そして、本作も含めこれらの作品に共通しているのは、観やすく飽きさせないエンタメ性を保ちつつ、フィクションであっても自国の社会問題に真正面から向き合った作品が多い印象で、このエンタメと社会派メッセージのバランス感が本当に絶妙なのです。

本作は、デンマークの児童養護施設における虐待について実話をもとに製作された作品。序盤から終盤に至るまで胸糞なエピソードの連続で、子どもに対する虐待が特に苦手な私にとっては、本作の大半はひたすらに観ていて痛ましく苦痛な時間でした。

が、映画としての見せ方がなんとも秀逸です。テーマ・内容はもちろん重苦しいのですが、作品のテンポの良さと常に一筋の光明を入れ込むことで、受け手側にもわずかな希望を持たせ続け、少年たちを応援したいという気持ちが強くなっていき、作品への没入感も強くどんどん引き込まれていきます。

そして、この作品に引き込まれる理由として、演出の巧さだけではなく、子どもたちも含めた素晴らしい演技力が非常に大きいと思います。まず、主人公の兄弟2人の演技が素晴らしいです。本当に虐待を受けているかのような絶望感、悲壮感と大人たちへの憎しみの表情は圧巻。

そして、敵役となる極悪校長を演じたラース・ミケルセン。なんと、あのマッツ・ミケルセンのお兄さん!マッツに引けをとらない迫真の演技力で、観ている我々の憎しみを全身で背負う凄まじい悪役っぷり。彼の子どもたちに対する惨すぎる姿勢があったからこそ、この作品がここまで痛ましく子どもたちに同情せずにはいられない、ある意味とても魅力的な作品になったと言っても過言ではないと思います。

その他の役者陣も本当に素晴らしい演技で、内容、演技、演出ともに優れた、デンマーク映画のクオリティの高さを改めて確信させられた作品でした。
みかんぼうや

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