MARUKO

シェイプ・オブ・ウォーターのMARUKOのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

“贅の限りを尽くした”極上の一品。

こちらが“言葉を失う”不思議な感覚。
今まで感じたことのない独特な余韻。

決まった形をもたない水、決まった形をもたない愛。そんな愛に言葉、見た目…具体的なものはいらない。
美女と野獣よりも美女と野獣たらしい。

思ってたよりもファンタジーだったけどいつの間にか引き込まれて、ふわふわというか映画のなかを泳ぐような…なんとも言いがたい浮遊感漂う感じ。夢を見たときと近い感覚かな?
とても味わい深い。

この映画の世界観には無限に浸っていられる。
オープニングでおとぎ話の世界に入る準備万端になる。あの洞窟に入る感じが物語に吸い込まれるような感覚になる。そこからスッと引き込まれる。もはや夢。

愛の形とは対比的な、特有の形をもつ卵が妙に印象的だった。
イライザが声を失った原因の傷を最後治すのかな~と思ったら、そうはさせないギレルモ。
アリエルは声をアースラにとられて念願の人間に、イライザは声を失った傷で人魚に。
やられた。水の中なら声もいらない。
オープニングからファンタジーを貫いているからこそのラストシーン。ほんとなら「そんなまさかと突っぱねたくなるようなラストだったが、 もう心が許している。
スッと入ってきて芯から感動する。不思議なくらい。
とても美しく映えていた。

特に好きなシーンは、イライザが“心のなか”で声を出して歌うシーン。
もう最高だった。
モノクロ。
色を失って声をもち、徐々に色が戻って手話になっていく。それまでこだわっていた色がなくなることで、それまで無かった声が引き立つ。
ゾクゾクした。

障害者、黒人、ゲイ、当時のロシア人がみんなで半魚人『神』を救う(すがる?)のは、とても興味深い。

素晴らしい音楽。とても美しい。
テーマ曲の「The Shape of Water」で鳴り響くキーンと独特な高音。これグラスハープだよね?"水"

素晴らしい色のコントラスト。こだわり。
青でも緑でもなく"ティール"。緑がかった青。
その中で魚人の体に光る鮮やかな青。
そしてイライザが身にまとう赤。
赤の反対色は青ではなくて緑。
その色の組み合わせが素晴らしく良くて、うっとり。
他にも端々にこだわりを強く感じてとても芸術的。13ノミネートは納得だった。

物語のスパイスになった冷戦の設定。ファンタジーながら巧妙に組み込まれていた。昔のアメリカを取り戻さんとするトランプさん効果も健在っぽかった。

ロマンス、アンチテーゼ、冷戦、マイノリティ……ほんとに全部詰め込まれてる。
心をトロットロに溶かされて、水の流れに任せて揺られるような。感情的で美しい。
こういう美術的な作品大好き。

クレジットに入ったとき、エンディングで興奮した肩の力がフッと抜けて背もたれにガクッともたれかかり、自然と「わぉ…」と声に近いようなため息が出た。
夢から目が覚めた瞬間。
こんな感覚久々。
MARUKO

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