mrかっちゃん

シェイプ・オブ・ウォーターのmrかっちゃんのレビュー・感想・評価

4.4
第90回アカデミー賞にて作品賞、監督賞、美術賞、作曲賞の四冠に輝いた冷戦下のアメリカを舞台に声を無くした孤独な女性とアマゾン川の奥地から連れてこられた半魚人との奇妙でどこか愛おしい愛の物語。

個人的にこの映画を観る前は作品賞は「スリービルボード」が取るだろうと思っていましたが、結果は「シェイプオブウォーター」でした。
でも今は見事四冠に輝いた事に納得している始末です。
なりよりSFでしかもクリーチャーが出てくる映画が作品賞を取る事に驚いています。
僕も特撮好きなので素直に嬉しいです。

タイトルを直訳すると「水の形」
でも水に形はありません。
果たしてどういう事なのかと考えていましたが、見終わった後意味が自ずと分かり心の中に入って来ました。

デルトロ監督は日本の特撮やアニメが大好きなオタクで目は少年のようにキラキラしている方です。
監督の作品は恥ずかしながら「パシフィックリム」しか見たことが無いので比較などは出来ませんが、ファンタジーというお伽話を現実の情勢と合わせることで、よりお伽話の部分が際立ちそれでいて今の社会の問題を提示しているように思えました。

主人公のサリーホーキンス演じるイライザは話すことのできない身体障害者で同じ職場の友人のゼルダは黒人の女性。
イライザの住んでいるアパートの隣人の売れない画家の男性ジャイルズは同性愛者だったりと冷戦下の時代背景的に迫害され人間として見られていなかった人たちが主役になっている。
そして人では無い半魚人の「彼」。
社会から見放されたアウトサイダーたちの物語でもあると思います。

この映画の良かったところは3つ。
役者、美術、メッセージ性です。

サリーホーキンスの話せないのに心に訴えかける迫真の演技。
話せないからこそ伝わってくる心の声がとてもうまく表現していて素晴らしかった。
そしてマイケルシャノン演じる「ストリックランド」この人がまぁ悪い人で悪の権化みたいな人でした。
おしっこしても手洗わないし奥さんに黙れと一括して口を塞いでsexしたりとインパクトが強いです。
政府の役人でロシアに対抗しようと半魚人を利用するのですが拷問したり解剖したりしようとするので心底からクソ野郎と思いました。

映像の美しさは本当に綺麗で美術は素晴らしいです。
特に半魚人のスーツですね
魚ぽいところと引き締まった身体付きが綺麗でダグジョーンズの魂を宿らせた演技もあり本物生物のように思えました。
目をメイクアップスタイリング賞に輝いた初の日本人辻さんが作っています。
どこか不気味だけど表情は豊かで愛くるしさと神々しさを感じるデザインは監督のオタク心が全開になっていると思います。

最後に作品が伝えようとしているメッセージ。
現代は一言に恋愛といっても色々な形があります。
男女のカップルや同性愛者カップル、結婚はせず事実婚のままだったり子供は作らないカップルがいたりと様々です。
そんな愛の形を優しく包んで肯定しているように思えて感動しました。
当事者の2人が幸せならそれでいいんだよって言っているような寛容さと優しさ。
また、冷戦下という時代背景が現代とどこか似ている節があり政治的な意味合いもあった。
トランプ大統領になり移民は追い出せ、力こそが正義だと謳っているアメリカ政府。
冷戦下は人種差別が蔓延り宇宙開発や軍事開発など力が物を言う時代でした。
まさしく今も変わらない。
五月までに米朝首脳会談があるそうですが、そこで何かが変わるといいな。

深く優しい愛の物語で、アウトサイダーたちの愛の中に純粋で美しい本物の愛を見ました。
美しい作品でした。