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ライオン・キングのHrtのレビュー・感想・評価

ライオン・キング(2019年製作の映画)
3.1
曲の力が強い。
歌ありなしに関わらず『ライオン・キング』は名曲揃いで、映画館で聴ける喜びはとても大きかった。
動物が歌い踊る様は実写表現(正確には「実写」では無いので「超実写」という表現がされている)が難しいところだが、かなり良くできていたと思う。
ドナルド・グローヴァーとビヨンセの歌声が“Can You Feel the Love Tonight?”で重なる瞬間。
表情で見せることのできない動物の感情表現を見事に歌で表している。

映像も素晴らしかった。
ジョン・ファヴロー監督のフルCGアニマル映画という点で既視感ありまくりだったが、向こうはジャングル、こっちはサバンナという違いはある。
動物の描き方もよりリアルに近かった。
ただ、リアルであればあるほど良いのか?という疑問は残る。
個人的には少しデフォルメさせても表情を作った方が良かったのでは?と感じた。
個体区別が難しいのがその理由だ。
シーン毎の立ち位置や何をしているかによって一応区別できるので大した問題ではないが、ターゲット層に入ってるであろう小学生の子たちはどう観るのだろうか。
シンバとスカー以外は区別自体大して必要ではないという考えもあるだろうが、その二頭も暗がりではどちらがどちらか分からないこともあった。

アニメのカットを多くのシーンでそのまま引っ張ってきているのも気になったが、これはアニメがベストなアングルで描いているが故に選択の自由度を制限されてしまったのだと思う。
最後のシンバが咆哮するシーンは全く同じカットの連なりだったが、曲と映像の力で強引に説得されてしまった。

ここ数年のディズニー実写作品群の中でも本作は再解釈の余地が残されていなく、だから映像もストーリーもアニメに沿ったものにせざるを得なかったのかもしれない。
それでもテーマである“the Circle of Life(生命の環)”を十分に描けていた。
社会という狭い範囲ではなく、全生命の営みに立ち返る作品があっても良いと思う。
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