つう

ちはやふる ー結びーのつうのレビュー・感想・評価

ちはやふる ー結びー(2018年製作の映画)
4.2
『青春、全部かけてたって「ちはやふる」には勝てない!』

千早たち瑞沢高校かるた部は2年目の全国大会を3位で終わり、最後の一年に雪辱を胸に誓うのだった。その年の名人戦では原田先生と周防名人が戦い、クイーン戦では代表戦を千早と争った我妻が絶対王者の詩暢と戦うのを部員全員で見守る所から物語が紐解かれていくのだった…

前作の『上の句』『下の句』の二作から2年の月日を経て、ついに公開された『ちはやふる 結び』

原作は末次由紀先生の同名マンガを実写映画化の第3弾となる。

前作では1年の全国大会を描いたまでだったのを今回は3年春からのスタートとなる。2年時の全国大会は割愛&改変。

競技かるたをスポーツとしてアニメ、そして原作すら超えた描写した前作よりも更に凄みを増したのは圧巻。GoProなどを使い、さらに臨場感を出してきた。

そして、かるたをした経験を劇中でも演技もブラッシュアップさせた演者の面々にも拍手を送りたい。

前作は心理描写を含めた演出だったのを今回はシンプルにかるたシーンで魅せてくる。

それこそ先日のオリンピックのフィギュアスケートを彷彿とさせるくらいの感動がある。

なんと言っても監督の小泉監督の手腕に驚かされる。『上の句』『下の句』では原作を10巻までを消化アレンジした。

今回は残りの現在、刊行されてる37巻までを描いた上に原作では到達してない部分を映画オリジナルとして描くというフツーに考えればムチャな所業。

例えるなら『逆襲のシャア』でニューガンダム1機でアクシズを押し返すという所業にも似ているくらいムチャなのだが。

そこは「小泉監督(ニューガンダム)は伊達じゃない!」と言わんばかりに上手くまとまってしまった。ガノタにしか分からん例えで申し訳ないw

もうマンガ原作は全て小泉監督にオファーするのが正解じゃないの?ってくらい上手い。

まず新キャラの筑波。原作ではビックマウスで実力が伴わないというのが最初なのだが。今回は原作で出てくる田丸という実力者新入生と掛け合わせて無駄にキャラ乱立を防ぐファインプレイ。

菫は上手く立ち回らせてキチンと魅力を出したし。原作以上に物語を動かすイイ歯車になってくれた。

そして、映画オリジナルキャラの我妻。原作の理音を強気にしたようなキャラクターで短い中でも原作にも登場しそうなくらいに世界観に馴染んでるしキャラがキチンと立ってた。

周防さんも原作では長い時間をかけて良さがジワジワ出るキャラを上手く使っていた。天才っぷりを少しコメディリリーフとして使ってたりと。

その他にも名前すらクレジットされてないものの聞こえてくるセリフなどからは登場しない原作重要キャラの翠先生だと分かる人には分かるように配されてるのも原作ファンからしたらニクい演出だ。

前作の登場人物たちも新キャラたちに負けてはいない。

全員が上手くなってる。かるたも演技もだ。

『君の名は。』で一気にブレイクした上白石萌音は三葉らしくなく、より一層カナちゃんっぽくなってたし。

もはや名バイプレイヤーの領域にすら入った肉まんくんこと矢本悠馬は貫禄すらある。

今回はかるたシーンこそ少ないものの相変わらずのラスボスの存在感と威圧感を発揮する松岡茉優。

他の主要キャストも凄かった。真剣佑は「ちはやふる」の新というキャラを通して作品だけでなく本人の芸名を原作者の末次先生に了承を得た上で新田真剣佑と改名するくらいだ。

スポーツ、青春、恋愛と上手くバランスを取っていた。このバランス感覚は凄い。

そこまで大絶賛ながらスコアが満点ではないのか。

やはり中盤がダレてしまうのは否めない。限られた尺で駆け足感がないのか?と言われれば駆け足っぽさは出てる。

太一のラストの行動はチョットだけズルいようにも映らなくもない。

でも、それは原作を読んでいるからだというレベル。映画版の3作だけを知ってるなら問題ないレベル。それくらい上手い。

なので、この映画を観賞して、あのキャラの行動には、こういう複雑な葛藤があったのかと原作を読んで楽しむコトが出来るし。

原作を知る人には違いを楽しめる。改変って、こうすればイイんだ。アレンジとはこういうコトだというのが体験できることでしょう。

同時公開に『リメンバーミー』があり、アカデミー受賞直後にして春休みというブーストがあるので公開館数は少ないワケではないが席数が中規模なので、どの上映回も埋まるのが早いので、そこをご注意して千早たちの青春の結びを堪能して欲しいです。
つう

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