つう

シン・ウルトラマンのつうのレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.5
『特撮の国から庵野の為に!来たぞ!我等の樋口真嗣』

メフィラス構文などがSNSでトレンドになるなど話題のシンウルトラマン。
プロモーションの仕方が庵野秀明、庵野秀明と押し出されていますが監督は庵野秀明ではなくエヴァの碇シンジくんの名前の由来にもなっている盟友である樋口真嗣。

自分は初代ウルトラマンを観ているものの特撮オタでもないので普通の良作っていう感じの作品でした。

TVシリーズである初代ウルトラマンを映画化した作品。アプローチの方向性としてはシンゴジラ的ではあるものの、シンゴジラとも異なるというチョット歪な作品に仕上がっていました。ゴジラ映画シリーズとして作られていたのに対してウルトラマンはTVシリーズだというのが、どうしてもTVシリーズの総集編を観ているような感覚になりました。

序盤はテンポの良さがあって良かったんですが中盤以降は息切れをしていった感じでした。

庵野脚本によるエヴァっぽさとか庵野っぽさは感じられるんですが何というか情念みたいな熱量や作家性を注いでるように到底、感じられませんでした。どちらかというと個人的な印象としては「庵野秀明作品というよりメッチャ、樋口真嗣映画だな」っていう感想です。

特撮シーンには定評があるけど人間ドラマが苦手であるというのは樋口真嗣の良さと悪さがまるっと出ている感じ。脚本のセリフ回しなどはエヴァっぽいというかアニメっぽくしてるけど、そこを丁寧にやってる感じはない。シンエヴァでストーリーに関わらないような部分に心血を注いでるのに、そういうのが感じられないから脚本から「庵野っぽさ」は感じても「庵野らしさ」というのは感じられなかったんだと思います。

斎藤工と長澤まさみがチームだ!バディだ!と声高に掲げるも、そこが描けていない。そこに、ご都合感を感じてしまうのが奇しくもシンエヴァの作業によってシンウルトラマンの製作現場にあまり立ち会えなかった庵野秀明と樋口真嗣の意思疎通ができていないみたいなのを如実に出ていたと思います。

ヒーローものとしての魅力的なヴィランを描けるのかというハードルはメフィラス星人を使って上手くクリアしていましたね。山本耕史の不気味さが良い演技で素晴らしかった。そのシーンにおけるニセウルトラマンを何度も登場させるあたりは、意識としてニセモノというのが払拭できていないのが感じとれました。これは再三、庵野秀明が自身に問いかけているのがこういう形でも出てるのは、もはや伝統芸能だなとさえ感じましたね。そういう部分は数少ない「庵野らしさ」だったと思います。

長澤まさみのハラスメント問題にはどうも思わないんですが。むしろ、長澤まさみの事務所の方針の方が気になりましたね。以前、主演した「マザー」でホームレスを演じた時もそうでしたし。今回の映画でも何日も風呂に入っていないで作業したっていうのが一切、ビジュアルとして感じられない。髪が脂っぽくなってるワケでもないし。むしろ肌とかはツヤツヤだし。

セカチューで頭を剃るっていうのをやった長澤まさみだったけど近年はこういう部分はどこまでも踏み込まないっていうのがあからさまで残念だなぁって思いますね。良い女優なだけにそこでブレーキになってるのは個人的にはもったいないなと思います。

対して斎藤工には特にもないですかね。映画「春琴抄」の頃から演技がちっとも上手くなってないのでそもそも期待はしてませんが。
こういうキャラは東出くんとかの方が向いてそうですけどね。

樋口真嗣監督にとっては今回のシンウルトラマンの功績で進撃の巨人の興行的な失敗から脱却できたのは良かったと思うと同時に企画、プロデュース、スーツアクター、脚本という関りをしたけど予算もないし自分の好きなウルトラマンを好きにできないなら監督という責任は負わないぞっていうほかは好きにやるっていう良いトコ取りで上手くいけば庵野秀明よくやった、失敗すれば樋口真嗣に汚名が行くという構造は樋口真嗣自身はどう感じてるんだろうとチョット思ったりしましたねw

個人的な見込みとしては興収は40億ぐらいですかね。うまくいけば50億超え。進撃前編は超えるだろうけどシンゴジラには届かないという興収と評価が合致する結果になりそうな気がします。
つう

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