うるぐす

検察側の罪人のうるぐすのレビュー・感想・評価

検察側の罪人(2018年製作の映画)
4.4
「木村拓哉は終わらない」

木村拓哉が最高だった。
そして、この作品が今後、少なくとも10年は、木村拓哉が終わらないことを証明してしまった。そんな感想。
木村拓哉を作品に落とし込む時に、みんな見たことない木村拓哉に挑もうとする。しかし、それと同時にファンが見たい木村拓哉を成立させようとしてきた。その難しさに苦しんだ作品もあった。これは木村拓哉本人に1つも落ち度はない。それもこの作品が示してる。彼は、SMAPの木村拓哉でいた時から今も何一つ変わらず、周りから求められるもの・ことに対して自分の全力で挑む。ひたすら前に。前に。
それでもこの作品では、もしかしたらファンが望んでない姿かもしれない。でも、原田眞人監督が引き出した役者としての凄みがそこにはあって、それだけでもう大満足で、この先、どんどん演じる幅はとどまることをしらない。
そのきっかけになったのではないか。
やっぱり木村拓哉すごいよ。かっこいいよ。日本一だよ。
そして、二宮和也。敬遠していたわけではないけど今まであまり見ることがなかったけど、すごく上手い。どこまでも独特で、自由で、囚われない。今や主役を演じることが多い中で今回二番手を演じてるからなのかな。すごく羽ばたくように楽しそうで軽やか。
ニノ演じる沖野の取り調べのシーン、あれ、リーガルハイの古美門のような心地よさと破壊力があって、あのシーンだけでも何回も観れる。あれやばくねーすか。なにあの畳み掛け。映画史残るやろ。

正直言って、この2人の共演に関して、「うーん」と思った部分はあります。最初は特にそうだったし今もモヤモヤは0ではない。色々と勘ぐってしまったり。でも、それはこの2人には関係ない別の場所に対するもので、それはこの映画そのものには関係ないな、と。

ただ、こんなにすばらしい共演が実現したのだから、SMAP解散して正解だった、みたいな意見に対しては怒るけどね、そりゃ。それに関してはふざけんなって話で。

映画を見たその日の帰り道、本屋さんで原作を少し立ち読みしてたら、映画とかなり異なってるのではと思い購入。そして読破しました。
原作は2012年とかなんで、それを2018年現在にするにあたって、より強く描く部分とそうでない部分の抽出があったような気がします。それがすごく良いなってとこと、うーんってとこがあるんですけど、まずうーんから。
割と、原作読まないと分からないなみたいなとこが多々あるんですよね。エアー麻雀のとことか、最上(木村拓哉)の学友たちのシーンとか山崎努のいきなり出てきてよくわかんない感じとか。これ勝手な想像なんですけど、もしかしたらこの作品2時間20分くらいで上映したかったんじゃないのかな…原田眞人監督の作品2時間20分くらいのやつ多いから。
それに対して、よかったのは、吉高由里子演じる橘と松重豊演じる諏訪部の設定を大きく変えたこと。
これにより物語がわかりやすく、推進力を持った。
橘が吉高由里子でしか成立しないし、めちゃくちゃかわいい。キュートすぎる。
松重豊やっぱすごい人だな。闇のブローカーをあんなに不気味さと人間味を持たせられるの松重豊しかいない。
最後に松倉(酒向芳)。なんだあの怪人。ダークナイトのヒースレジャーかよ。すごかった。

そろそろ内容に触れないとな。
物語の中心となる、とある事件。これによって登場人物それぞれの持つ正義や信念がいびつに現れ変化していくんですよ。その自分の信じる正義を貫きたいけど、疑ったり迷ったりしてしまう。その微妙な心のゆらぎ。葛藤。
それぞれの信じる正義は異なる。
過去に罪を犯したが時効という法律によりある種守られた人間を守るのが正義なのか、冤罪を生まないことが正義なのか、
実際に罪を犯した人間に罰を与えることが正義なのか。

そして、シンメトリーがすごく多かった印象を受けたんですよね。
オープニングカットからシンメトリーの連続も連続。さらに、
会議のテーブルが六角形だったり、
最上(木村拓哉)が集めるガベル🔨もシンメトリーで、
後半のラブシーンもシンメトリーで、
細かいこというと松倉(酒向芳)の髪型もそうでした。
左右対称。
表現したのは、もちろん、
善と悪。
罪と罰。
といったところでしょうか。
他にもあったと思うけど、すごくシンメトリーな構図が印象的でした。

正義だから、悪ではない。
正義じゃないから、悪。
そんな簡単に二項を切りはなすことなんてできない。最上(木村拓哉)が悪役と決めつけることはできないし、沖野(二宮和也)が善人というふうにも言えやしない。
だからこそこの映画は感じ方はそれぞれ異なるものになると思う。

日本のトップスターの共演は平成最期の大一番。その通りだとおもいます。
まだまとまってないので、また書き直すかもしれませんが、すごい日本映画でした。
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