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今夜、ロマンス劇場での655321のレビュー・感想・評価

今夜、ロマンス劇場で(2018年製作の映画)
3.1
現実なんてクソ喰らえ!
とでも言わんばかりのファンタジー。

「現実」という言葉の持つ後ろ向きな要素にとことん背を向け距離を置く姿勢は一貫されていて、清々しかった。

映画の世界からお姫様・綾瀬はるかさんが現実世界に飛び出してきたという設定だが、この現実世界には全く臭気が漂っていないので、むしろ逆に映画の世界に飛び込んでしまったかのような錯覚を覚える。
いや事実、私たち観客から見ると坂口健太郎さんのいる世界も映画の世界だ。
このまるで毒の無い世界観は意図的だろう。「虚構」に対する姿勢を示しているのだと思う。
本田翼さんが坂口さんを寝取って、これ見よがしにLINEモバイルダンスを披露するんじゃないか…という私のゲスな心配をよそに、善人ばかりの世界は続く。
それは恣意的な編集をする者の存在を感じさせるほどに。

それを薄っぺらいと断じてしまう事は簡単だし、私自身も少なからずそう思う。
だが『ローマの休日』や『カイロの紫のバラ』にオマージュを捧げつつ、どこまでも現実に背を向け虚構の世界の力を信じる姿は「映画」そのものへの愛や姿勢を感じられた。
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