叡福寺清子

少女ファニーと運命の旅の叡福寺清子のレビュー・感想・評価

少女ファニーと運命の旅(2016年製作の映画)
3.7
ドイツ軍の迫害から逃れるためにフランスからスイスへ.とくれば「サウンド・オブ・ミュージック」でございますが,本作はもっと過酷な旅でございました.こんばんわ三遊亭呼延灼です.
逃げても逃げてもつきまとうドイツ軍の影,そして時には囚われてしまう過酷な脱出劇.その度に周囲の大人達の助けで難を逃れ,また旅を再開する.そんな道中,子供は遊びの天才とばからに,歩くの疲れたといいながら次の瞬間サッカーの真似事に興じ歩を進める,やっとのことで川を見つけ喉を潤したと思った次の瞬間には水遊びが始まる.そしてまた歩を進める.その高低差に耳がキー(以下略).
子供達が何度も「怪物」に言及するが,そりゃね,普通ですら見知らぬ大人は怖いのにブーツ鳴らして銃を構える大人なんて子供の目からすりゃ怪物以外何者でもございません.学校に閉じ込めれた時鍵を奪ったせいで銃を突きつけられた男の子が,その怪物に立ち向かったシーンは惚れ惚れいたしました.あたしが12歳の女子だったら,速攻惚れます.それはともかく,怪物といえば非日常な存在,でも戦時中には怪物である兵隊が街中を闊歩するのが日常でした.戦時下では死が日常であると「人生はシネマティック」の時に記載しましたが,本作では幸いなことに画面上で子供の死が描かれることはありませんでしたが,そんな絶望を味わい方には「ヒトラーの忘れもの」をお勧めいたします.