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女は二度決断するのIlのレビュー・感想・評価

女は二度決断する(2017年製作の映画)
4.3
すぐそこに迫る脅威を前に一国の舵取りを任された首相、過去の自分の失態が原因で家族を殺す選択に陥る医者、夫から継いだ会社の存亡と政府の虚実からの自由を文字通り天秤にかけ苦悩する女社長

主に1人の人間の決断の重要性に焦点を当てる映画がいくつかあったが、今作はまさにある1人の女性が決断するに至るまでを描いた映画である。

主人公は夫と息子を愛し、幸せな生活を自分達ながらに謳歌していた。しかし、ある日突然、無差別な攻撃により2人とも失った。第一部は主にこの主人公の喪失についての話である。この時点で主人公はかなり追い詰められている。そして真犯人逮捕から始まる第2部で現代の人が人を裁くが現場、法廷劇へと大きく舵をとる。この裁判を通して現代ヨーロッパ社会での影の部分を描きつつ主人公は真犯人たち、そしてそれを取り巻く邪悪な実態に震え、憎しみを増幅させていくが、第3部で、夫と息子の暖かい思い出へと立ち返り、また、彼らの待つ海へと還るまでを描いている。

率直にいって見事です。部ごとに大きく様変わり物語構成から現代社会的な問題の提起などを含ませつつ、主人公の決断に至るまでのこれ程までなく心理描写を主軸においた今作は、大胆かつ繊細という言葉にまったく嘘が見当たらないものになっており、観終わった後の余韻、脱力感、そしてこの映画を創り上げた監督と悲劇に見舞われこの世の1つの地獄に襲われながらも決断を見出す主人公を体現してみせたダイアンクルーガーに感服する様は間違いなく今年トップ級です。
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