ヴェノムという怪物に身体が乗っ取られるホラー的な展開になるのかという大まかの予想を裏切り、トムハとヴェノムというバケモノの愛らしい一心同体型ビジランテバディムービーへと流れていくあたり、「ゾンビランド」のルーベンフライシャーらしさ全開。
ボンクラなトムハがミシェルウィリアムスと寄りを戻させようとヴェノムがアドバイスする等、もはやコメディで意表を突かれる。「寄生獣」の染谷将太と阿部サダヲのやりとりの斜め上をいくユルさだ。
キスしてヴェノムをミシェルウィリアムからトムハへと移した、その時の本意を照れ隠しするほのぼのトークは、事態の深刻さとあまりにもかけ離れたボンクラっぷりでクラクラしてくる。
だが、被験者との相性によっては寄生されたらすぐ死ぬ場面を見せておきながら、終盤にかけては誰にでも自由に寄生できる展開や、都合よくヴェノムと寄生された人間の外見がコロコロ入れ替わる等、この世界を貫くSF的なルール設定があまりにも大味でおざなり過ぎる。
また、最大の見所である夜のシーンでヴェノム同士が殴り合う場面も、背景と同化してしまい見にくく、また互いの外見の違いもそんなになく、キャラクター造形も平凡でアクション演出も下手くそだと言わざるを得ない。