このレビューはネタバレを含みます
ランティモス作品に共通する"結局不条理から逃れることはできない"というテーマが、不条理とはちょっと違うけどこの映画にもあった気がする。
アンやサラに対して本心なのかへつらっているのかわからないアビゲイル。裸の状態でアンとベッドに寝ている彼女を見つけて動揺しながら部屋を立ち去るサラを見つめるその目で、完全に欺瞞しようとしていることがまずわかる。そしてサラを宮廷から追い出した後、気が抜けたのか本性を表し始める。
下流から再スタートしてついに女王を意のまま操れるようになったと思ったものの、サラのように過去を共にしたわけでもなく、大切なウサギを踏みつぶし完全に化けの皮が剥がれたアビゲイルにはアンをコントロールするのはもってのほかであって、所詮は女王の侍女でしかないのである、と。
ストーリーがわかりやすいし、オンナ同士のバトルが延々と続いてどう着地するんだろうと思ってたけど、やっぱり最後はランティモスの「お前は詰んでるからね〜〜〜」っていう容赦の無さがちゃんとあった。
他にも、あらかじめ決められている運命から逃れられないと言わんばかりの、空間をワイドに写す感じとか、ジワ〜っと顔にズームしていくカメラワークが不穏な空気をしっかり作っていて良かった。