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ザ・スクエア 思いやりの聖域のBATIのレビュー・感想・評価

4.2
「ザ・スクエア」、リューベン・オストムンドの作品は初でしたが、お世辞なしにすごかった...。モダンアートと広告業界をアイロニカルに描きつつ、社会弱者との剥離された溝を描く。かつ無自覚な加害者の保身、自らの責任を社会性に転嫁し、当事者ではないと振舞う有様。まるで今の日本ではないか!

150分というランタイムが長く感じさせずにずっと何が起こるのか只管刮目させるカメラワーク。スリルの作り方がとてもこの監督は上手い。あらゆることをオーガナイズしなければならない立場の主人公にはコントロールの出来ないことだけが降りかかる。でも彼は全て誤った選択しかできないのだ...。

公平さについて語らんとするアートの送り手が全く客観性がないという恐ろしさ。

上映後の監督とのティーチイン、菊地成孔とのトークセッションと、監督の社会学的、傍観者効果についての話もとても面白く、このトーク含めての映画のように感じられて素晴らしいイベントだった。

「ブラック・ミラー」を悪意なしに社会学的な視点で、無理なく無駄なくまとめ上げている、大変テクニカルな作品であった。いい話ではないが、100パーセント絶望感に襲われる物語でもないのが好感。これは観て頂きたい一品。
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