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ザ・スクエア 思いやりの聖域のBigsのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

なかなか意地悪な映画で、面白かったです。

ストーリーは主人公の身に起きた盗難事件からそれによって引き起こされる騒動と、一見それとは関係のない出来事が描かれる。
(手の込んだ盗難事件→盗まれたケータイがあると思われるマンションでのビラによう反撃→盗品が戻ってくる、と同時にマンション住人の少年の訴え。美術館インタビューのチック症観客。インタビュアーとの一夜と詰問。ザスクエア展示の過激な宣伝と騒動。猿を模写する芸術家。)

まず、どのシーンもいちいち人間のいやらしさが切り取られていて、笑いながらも居心地悪くて面白かったです。
インタビューでは理解してないのに理解したふりするとこ。ビラ配りでは最初は調子いいこと言うけどいざ実行するときはそれを拒否したり、それを問い詰めたり。砂利みたいなのを積んだ現代美術を掃除機で吸っちゃったり。等々
人間どうしのやりとりって取繕われた部分が多くて、欺瞞だらけだなと思わされる。

上記のとおり、ディティールとしても欺瞞が見え隠れするわけですが、本作で描かれる最大の欺瞞は「人は自分の領域(関係する範囲)に入ってこない限り、事実になかなか目を向けない、見てみぬふりをする」ということかなと思います。劇中では何箇所かで見てみぬふりする場面(チック症の観客、猿模写の芸術家)が描かれます。
その状況を揶揄したものが劇中の「ザスクエア」として表れているのではないでしょうか。つまり自分の領域に入ってきたものは思いやるけど、範囲外の物は無視しているという。
このテーマが映像的な工夫ともマッチしていると思います。はじめの窃盗で女性が逃げてくるところ、ビラ配り後にマンションから逃げるときはカメラが殆ど動かず何が起きてるのか捉えてくれません。これはカメラのフレームがまさしくザスクエアになっていて、「視野外のものは観客は見れないし、事実は捉えられない」という映画で主張されていることを体感できるようになっていたと思う。

この映画の意地悪なところは、最初のインタビューで現代アートについて「どんなものでも額縁に入っていればそれはアートとしての意味を持つか?」というような話をしていて、映画を観て(=カメラのフレーム(ザスクエア)に映った出来事を見て)、何か意味を見出そうとする行為(上に書いたような感想も含め)にも欺瞞があるのではと思わせるところでした。
そんなことより自分で事実(現実に世界で起きていること)に目を向ける努力をしろと言われてるようでした。
観客側にも矛先が向かってくるという点ではファイトクラブを連想した。
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