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パスト ライブス/再会のBigsのネタバレレビュー・内容・結末

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます


MCTお題映画。

初恋の出会いと再会という普遍的な話。
劇的な展開や強い社会的主題を含むわけではないが、淡々とした展開ながらも独自の視点やリアリティ、地に足ついた演出とストーリーで、深く残るような映画だったし、こういった話の新境地だとも感じた。

子供の頃の10代(24年前)と、まだ可能性が開けた20代前半(12年前)、そしてもう各々の道に進みつつある30代中盤(現在)。
移住時の言葉、「捨てる物もあるから、得る物もある」。何かを選択して現在があるのだけど、他の選択をしたらという思いも馳せる。

再会も劇的ではない。Facebookで見つけて気軽に連絡とって、スカイプか何かで通話する。24年後の再会も何かあるわけではなく、連絡をとってあっさりと待ち合わせして会う。そういうところに劇的な演出や展開を持ち込まない独特の新鮮さ。12年前のやりとりは、Facebookの友達申請やPCでのスカイプ通話もリアリティがあったし、それが過去の物として描かれるようになったのかという。

再会してからの展開。各々の気持ちの強さやカルチャーギャップも感じるような再会。それぞれの現在の話、夫との生活、彼女との話。後にわかるがそこではノラはヘソンに韓国人らしさ(Korean koreanと言っていた?)を感じてる。
帰ってからのノラのヘソンへの印象。両方のアイデンティティを有し、でもやはり米国人的なような複雑な心境。
翌日のノラとノラの夫、ヘソンを交えた食事。夫とヘソンはお互い友好的に気を遣って接するために初めは拙い英語・韓国語で話す。でもそのうち韓国語でヘソンとノラだけで話し始める緊張感。そこではヘソンは今もある愛情や未練を隠さずifの話をするが、ただナヨンはナヨンだから渡米したし、そのナヨンが好きだったと言う。
本心でもあるし、美しい言葉ではあるけども、諦めきれなのではと言う気も。このバーの話だったり、最後の別れのときの来世の話は、どうにも諦められないことに折り合いをつけるために言ってるんじゃないか。人生は当然一度で無数の選択の上に成り立っていて、選ばなかった方は永遠に失ってしまう。そういう誰もが抱える人生の苦しさに対してなんとか折り合いをつけようと、自分たちに言い聞かせるように見えて、悲しさが込み上げる。
最後の別れは、しっかり時間を取っていて、作り手の主眼がここにある。手を持ち変えるのは車の中で手を繋いだ子供の頃も思い起こさせる。別れのセリフの後、心情の重心がヘソンからナヨンに変わったようで不意を突かれる演出だった。そのときにバストショットではなく、引きの絵になってるのも余計に涙を誘う。ラストのヘソンの表情も、そういう選択も含めて肯定するようだった。


時間の割き方

スーツケースの手の持ち替え、子供の頃に車で手を握ったことも思い出す。

仏教由来の韓国の言い伝え、イニョン。輪廻転生。

アジア系移民の話。
冒頭の他者からの目線、空港での税関、グリーンカード。元の韓国名はもう母親も呼ばない。
韓国系移民のアイデンティティ。寝言は韓国語。韓国語は母親とヘソンだけ。韓国人に対しては外国人的な目線で見てしまう(韓国人男性的と見たり)。
アメリカで成功したいという野心で故郷の韓国のことは考えないようにしたい。

絵作りとロケーションの良さ。公園のオブジェ。子供の頃の別れ道。自由の女神。

モントーク。『エターナルサンシャイン』。出会いと別れの話。

音楽も良かった。
Bigs

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