ぐるぐるシュルツ

さよなら、僕のマンハッタンのぐるぐるシュルツのレビュー・感想・評価

4.0
僕らのうわべだけの
常識の明確さを取り払って
心の複雑さに目を向けて
そしてそれを認めてあげなくちゃ

〜〜〜

ニューヨークを舞台にした、
大人になりきれない、
自己実現ができない若者の物語。
物語内物語だったり、
少しだけ仕掛けのある設定も相まって、
面白かったです。
物語内物語で干渉する作者っていうのも珍しいですよね。

それにこのニューヨークを舞台にした映画によくある
「乾いた」「湿度の低い」雰囲気が個人的にすごく好みでした。
ノア・バームバック監督に
どこかに通ずるような。
そして、
ボブ・ディラン流れがち(笑)

主人公のトーマスが序盤に求めることは、
「彼ら(両親・ 世間・NY)」よりも
良い者になることでした。
それなのに「彼ら」以下の自分を実感し
ウンザリしている姿なんかは、
結構共感できたりして。
そんなトーマスも、
隣人W.F.の助言を通して、
自分のありふれた価値観や常識を脱いで
窓に飛び込むことを
徐々に覚えていきます。
そうやって段々とかっこよく、
かしこく、
成長していく様は見ていて爽快でした。
個人的にそういうのめちゃくちゃ弱いです(笑)
自分の複雑さ、それを認めて、
磨いていくんです。
でも、そこで、
トーマスはまた壁にぶつかってしまう。
純粋さ(≒単純さ)を失ったことで、
ほとんど「彼ら」と同じ存在になって、
隘路に迷い込み、出口がなくなってしまう。

最後に選んだのは、
「彼ら」と一緒に良くなっていくこと。
それは、
自分だけじゃなくて、
相手の複雑さも
しっかりベールを剥がして認めてやること。
これが、多分、大人になっていくことなんじゃないでしょうか。
周りをどんどん良く変えていく。
決して一人では大人になれないんですね。

そのほかにも、
エイディプス・コンプレックスに踏みこんで、
フロイト的な解釈もできそうで、
面白いストーリーでした。

そして、ガールフレンド・ミミ役の
カーシー・クレモンズを知れたことが
今回大きい収穫でした。
とってもキュートな表情!