サマセット7

ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結のサマセット7のレビュー・感想・評価

4.2
監督は「スーパー!」「ガーディアンズオブギャラクシー」シリーズのジェームズ・ガン。
主演は「ウルフオブウォールストリート」「ハーレイクインの華麗なる覚醒BIRDS OF PREY」のマーゴット・ロビー。

アメリカの特殊作戦部隊タスクフォースX。
それは、スーパーマンやバットマンらスーパーヒーローの宿敵として投獄されたヴィランたちを集めて、減刑などをエサに決死作戦に従軍させる極悪部隊であった!!
サバント、ジャベリン、ウィーゼル、キャプテンブーメランらいずれも曲者のヴィランたちと共に戦地に赴くのは、我らがハーレイ・クイン(マーゴット)!!
今度のミッションは、南米の島国コルト・マルテーゼの極秘施設ヨトゥンヘイムへの潜入破壊工作!!
悪党たちは生きて帰ることができるのか!???

アメコミの老舗DCコミックのシリーズの一つ、ヴィランたちの寄せ集め部隊を主役にした「スーサイドスクワッド」を原作とする作品。
いわゆるDCEUの10作品目と位置付けられている。
2016年公開、デヴィッド・エアー監督による映画「スーサイドスクワッド」は、マーゴット・ロビーの快演に注目が集まったものの、作品自体の評判はイマイチであった。
ワーナーは、監督をジェームズ・ガンに変更、全てを彼に任せる決断を下す。
結果、ガーディアンズオブギャラクシー・ミーツ・デッドプール、とでも言うべき、破壊力の高い作品が出来上がった。
アメリカでは2021.8.5、日本では2021.8.13に公開されたばかりだが、特に批評家から高い評価を得ているようである。

ジャンルとしては、アメコミヒーローものにして、特殊部隊による潜入ミッション・アクションだが、同監督のガーディアンズオブギャラクシー同様、コメディ要素が高め。
また、R15指定とあって、バイオレンス描写や人体破壊が頻出する。
R指定のアメコミものという点や、振り切ったバイオレンスを笑のネタにするあたり、マーベル傘下のデッドプールシリーズを思い起こさせる。

結論から言えば、とても面白い!!!!!

今作の見どころは、ジェームズ・ガン節炸裂のテンポの良いストーリーテリング、過剰なバイオレンスをネタにしたブラックユーモア、過去の特殊部隊ものアクション、スパイアクション、果ては特撮映画などをオマージュしたと思われるアクションや映像の演出の妙、単なるネタかと思われた各キャラクターの特質が後に活きる巧緻な脚本などなど、か。

海からの潜入作戦で始まる冒頭から、ぶっ飛ばしてくれる。
上記の見どころのほとんどは、このオープニングで網羅されている。
監督の掌の上でいいように引き摺り回された結果、タイトルが出たあたりで、観客は、この映画がどう言う映画か、完璧に理解することになる。

中盤のいくつかの顛末は、酷すぎて笑ってしまった。

アクション演出も面白いところが多い。
特に印象に残ったのは、舞台の高低差を活かしたアクションの結果、ある2人のキャラクターが対峙するに至るシーン。
いかにもマンガ的なのだが、ビシッと決めてしまうあたり、只事ではない。
GOGでもそうだったが、ジェームズ・ガンのドヤッとしたアメコミ的絵作りの巧さは見事なもので、今作でも、ドヤりきったカッコいいシーンが頻出する。
典型的には、部隊がみんなで横並びに手前に歩いてくる、というHERO的なベタベタな絵だが、ベタ!!!と思いつつ、やっぱりゾクゾクしてしまうのであった。
特に終盤は、日本の特撮ファンはとても楽しめるのではないか。

キャラクターを立てることと、物語の面白さを両立してみせる脚本もお見事。
終盤、これもう無理だよな?という最悪最低の事態を前に、悪党たちが見せる行動と展開の連打には、テンションが上がらざるを得ない。

ビジュアルも含め推したいブラッドスポート、安定の純粋さと狂気を備えるハーレイ・クインをはじめ、各キャラクターもとても良い。
このチームで、何本か続編を出してほしいものだ。

今作のテーマは、正義とは何か、真に正しいことを行うのは何者か、というところか。
ヴィランの部隊を主役とする作品としては、まさしく核心に当たるテーマだが、セリフで語り過ぎず、しかし、正面から、このテーマを描き切っているように思う。
とあるキャラクターの動向や、終盤の熱い展開などは、象徴的である。
最後、決定的な働きをするのは、何者か。
このテーマに照らすと理解できるように思う。

今作は、国家が人類全体の利益を標榜して動くことの胡散臭さを痛烈に描いており、社会批評性がある。
また「差別的だな!」という言葉がネタとして出てくるが、今般の行き過ぎたポリコレへの皮肉と思われる。

不謹慎かつ過激に笑わせてくれる、DCアメコミムービーの劇薬にして、新たなる傑作。
キャスティングも、「スーサイドスクワッド」からの続投キャストと、ジェームズ・ガン人脈と思われるMCU出演キャストが融合し、なかなかスゴイことになっている。
サメ!ヨンドゥ!ヘイムダル!!!
来年春公開予定のDCの新作「ザ・バットマン」も楽しみだ!!