TaichiShiraishi

少女邂逅のTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

少女邂逅(2017年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

24歳の女性監督による自主映画で大変な意欲作。
いじめられて言葉を失い、蚕を箱に入れて唯一の友達にして飼っていた少女ミヨリ。しかしツムギと名付けていたその蚕はいじめっ子に捨てられてしまう。そんな彼女の元に紬という名の転校生がやってくる。ミヨリは紬と仲良くなり心を開いていく。

映画全体を見る限り紬=蚕のツムギと解釈するとしっくり来る。


紬はリストカットしても痛がらない→虫は痛覚神経がない。
リストカットした傷口から筋繊維か何かわからないが糸を引きずり出す描写がある。蚕のようにいとをだす。

紬はツムギが投げ捨てられた直後に現れた。

彼女は生きた蚕が入った眉を茹でる実験に耐えらなくなり、熱湯が入ったビーカーを叩き落とす。

紬は高校を卒業してすぐに部屋の隅で餓死する。蚕がたまたま成虫になっても何にも出来ず死んでしまうのと同じ。

ツムギのキャラ造形はとにかく虫や蚕と重なる。
それ以外でも国語の授業で読んでるのがカフカの「変身」で虫を想起させる要素がそこかしこに。


人間に奉仕することで子供の間だけ生きていられる蚕の悲しい本質が、思春期の少女たちと重なる。

虫に痛覚神経がないのはすぐ死ぬから痛みを知っても意味がないという理由も、向こうみずな若者達を表してる。

家出して2人で沖縄に向かう途中でミユリが紬との糸を文字通り切ってしまう、そこでブラックアウト、ミヨリ帰宅、紬は保護され、ジャンプカットで受験に上京まで一気に飛ぶのも面白かった。



ツムギがミヨリの夢の中で
「女って身体以外価値ないから人形にして売ってんの」っていうシーンは強烈。こんなセリフ女性監督じゃなきゃ言わせられない。

でも主人公ミユリの夢の中でそれを見るってことはミユリもそう思ってるんだろうか。

とにかく主演2人が美しかった。保紫さんもモトーラさんも暗くて儚くて現実離れしてて、また青っぽい映像がそれに合う。
およそ2人には似合わないであろう沖縄に行きたがるのも切ない。


ちょっとイジメから簡単に立ち直りすぎ、とかいじめっ子達のことも掘り下げて欲しかったっていうのはあるけど、才気走った見応えある映画でした。
TaichiShiraishi

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