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聖なるものの8637のネタバレレビュー・内容・結末

聖なるもの(2017年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

約半年ぶり3回目。この半年のうちにエヴァンゲリオンを観た事で、少し創作パートの感じ方が変わった。

しかし、これはもう、、、何と言えば良いのだろう。めちゃくそAVで、ほんのり特撮風味で、映画の歴史を継ぐ初期衝動がよく見えて、そして...映画作りを決定的に諦めたくなる映画でもある。
ただの個人的記録風映像なのにエモい色彩がいくつもあるし、映画と共に自分の感情のアップダウンがよく分かる。

小川紗良が近距離で語り出すファーストショットからこの映画は始まる。岩切一空の風貌が語る様に、この物語は陰キャで根暗なただの映画好き、"我々"の物語な気がする。陰キャにしか持てない感情、陰キャすぎるからこその心配(新歓のくだり)。そこに通ずるのが、先輩後輩関係の闇。

そして運命の出会いの瞬間。立場を考えるととても駆け落ちみたいにロマンチックだけど、そこからの、あのときめきとも恐怖とも言えなくて背筋が凍る(恐怖じゃねえか)タイトルカット。ここで一層物語に引き込まれる。

これあれだよね、、、俯瞰で観るとめっちゃ興奮するやつだよね、、、なんて考えながら目の前のそれを現実的に捉えて、この尊さを何度も楽しむことができた。だからこそ全編直視できない。

そして映画パートが始まる。
映画の凄みの一つは、"監督とどんな関係であれ、脚本上では俳優は何でも芝居する"そんな怖さだと感じた。

全く訳の分からないストーリーなのだが、記録映像のように感情が高まるさまが見えた。それはまるで、可愛いこそが正義で、百合こそがこの世のうつくしいもののすべてだと言わんばかりだったが、このシークエンスが庵野秀明の「ラブ&ポップ」のオマージュなのだとしたら、二人ともとてつもない変態である。

しかし現実では険悪な雰囲気になっているところがまた映画として面白い。

そして、ここで登場するのが松本まりかっていうところがあざとい。役にちゃんと合っているし、家の風貌が何かもう松本まりかっぽいんだよな。それが初期衝動が犯罪に変わる瞬間でもあり。

ここで一空が自分勝手な人間だという共有が観客の中でもできるピンチが起こり、孤独になった一空の反撃の様子に切り替わる。
この映画で一番興奮する、概念を超越して初めて俯瞰で現実を見たシークエンス。感情爆発の瞬間であり、こんな圧倒的なものを出されれば正当な評価もできない。というかあの光景を見た時、一空どんな気持ちだったんだろう。

僕が見逃さなかった一瞬がある。岩切と松本が、芝居ではなく監督と女優という立場で話をしている場面。あのシーンの飛び越えた感がえげつないし、一番正体不明な"松本"に「映画って嘘だと思う?」と問いかけられてしまえば...この衝撃は「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君に」で自分が観た、オタクが自身の内側に持つ世界を否定される実写パートの様に我々映画好きの心臓に刺さるだろう。
この映画の中で"映画の向こう側"を観られたとすれば、そのほんの一瞬だった。

最後に、何ならもう欲望でしかない5月32日。結局ここに帰結させて、現実との境目を訳分からなくさせるラストが好きだ。「花に嵐」もそうだったんだよな。

そもそもMOOSIC LABという企画こそが、一人の歌手の"いままで"を肯定するようなものになっている。コロナ禍でU-NEXTに入ってこの映画祭にのめり込んだが、未だに揺るがないベストである。

すいません。観ながら思った言葉を無理に繋ぎ合わせながらつくった感想なのでめちゃくちゃ拙いですが、、、
ちなみにこの映画、5月でU-NEXTからもなくなって、もう観る機会がなくなりますね...円盤...笑
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