hirogon

祈りの幕が下りる時のhirogonのレビュー・感想・評価

祈りの幕が下りる時(2017年製作の映画)
4.0
「麒麟の翼」に続く、加賀恭一郎シリーズ劇場版完結編。
「麒麟の翼」も良かったですが、本作は完結編というだけあって加賀の生い立ちがかなり詳しく語られると共に、母親と加賀自身の過去が事件に絡んできます。そして加賀親子の過去が、事件を解決する上での重要な要素に。

映画は、人間ドラマとしても推理ものとしても、質の高い作品になっていたと思います。
事件に関わる人達の人間ドラマと加賀の謎解きの妙を味わうには、できるだけ事前情報が少ない方がいいので、ネタバレ情報にはご注意下さい(笑)

加賀恭一郎を演じる阿部寛は、冴えた推理とコミカルな面のバランスが絶妙。いいですねぇ。
今回の事件の主人公、著明な舞台演出家、浅居博美を演じる松嶋菜々子も良かった。映画内で加賀も「ちょー綺麗だな」と言っていましたが、綺麗ないい女優さんになったなぁ~という印象です。

ドラマ部分の主題は、”親の子を思う気持ち”、”子の親を思う気持ち”。
しかし、一方で、家族や子供の事も省みずに、自分のことしか考えない親や、そんな親を憎む子の感情も対比的に描かれます。
そういった行動や感情が事件の発端となっていきます。

加賀が、事件の真相が掴めずに、改めて事件に関わる人物関係をおさらいした時に発した言葉、「残るピースは俺自身か?」冴えてます!
手がかりを掴んだ加賀が、事件解決に迫る終盤は画面から目が離せません。

そして、加賀と博美が、明治座公演で迎えるラスト。
博美の言葉が胸を突く。「いよいよ幕が下りる時がきました。長い悲劇でした」 映画の題名が鮮やかに浮かびあがります。

本作では、加賀恭一郎が日本橋付近に住んで働くことに拘る理由も説明されていて、シリーズファンは必見の作品です。
脇を固める役者さんも良い。
溝端淳平、山崎努、伊藤蘭、春風亭昇太、小日向文世、田中麗奈、烏丸せつこ、及川光博、キムラ緑子…。

エンドロールでは、加賀恭一郎が日本橋付近をぶらつきながら馴染みのお店に顔をだしますが、過去作品の登場人物がちょっと出演しているのも嬉しい。
hirogon

hirogon