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沖縄スパイ戦史のhirogonのレビュー・感想・評価

沖縄スパイ戦史(2018年製作の映画)
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年末に少し重めの作品ですが、これは今年の区切りとしてレビューUPしておきたい。

沖縄戦での、陸軍中野学校の卒業士官の暗躍による少年兵や住民を巻き込んだスパイ戦の様相をあぶり出したドキュメンタリー。

沖縄戦では、ひめゆりの塔などに象徴される南部戦線での話が主に伝えられていますが、スパイ線は中部から北部の山間地域を中心に繰り広げられます。

”沖縄戦の地獄”という表現が何度かでてきます。スパイ戦は、一般の住民を巻き込んだ悲惨な戦争だった。

以下ネタバレですが、
普通の映画とは異なり、記憶している限り情報を多く載せています。間違いもあるかも。

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本作で取り上げられる主なテーマは3つ。

@護郷隊
・主に、沖縄北部での作戦
・少年兵によるゲリラ戦のための部隊
・陸軍中野学校の卒業士官の青年隊長(村上第一隊長、岩波第二隊長)の二つの部隊を合わせて1000人近く、多くの少年が犠牲になる
・隊長は生き残って、戦後に遺族をまわり慰霊行事に参加
・足手まといになる人間は、友軍に殺された

@戦争マラリア
・当時、波照間島には軍は駐留していなかった
・軍は波照間から西表島への強制移住を強行
・陸軍中野学校の山下軍曹(偽名)は学校教師としてやって来るが、島の状況を監視しつつ、ある時、軍部からの強制移住を指示~山下は、戦後、滋賀に
・欲しかったのは、家畜等の食料
・当時、西表島はマラリアの地とされ、マラリアで島民の約1500人の1/3が亡くなる

@住民虐殺
・住民を巻き込んだ秘密戦
・スパイリストの作成、些細な理由でリストに載る、疑念の連鎖
・住民による裏の監視組織
・軍の作戦行動の障害になる要因は取り除く、それが住民虐殺に繋がるものであっても
・友軍や住民がスパイリストに載った住民を虐殺
・沖縄の秘密戦は、本土戦を見越していた
・もし本土戦があったら、沖縄戦同様の地獄になっていた


当時、沖縄だけでなく日本全国に陸軍中野学校の人間が配置されていた。
そして、沖縄戦と同様の住民を巻き込んだゲリラ戦・スパイ戦が想定されていた。

日本軍は住民を守らない、自衛隊も同様。
自衛隊法、陸自教範-野外令、特定秘密保護法。
軍が守るのは、国体護持であり、基地であり、軍であり、幹部、、、と映画は訴える。

対中国対策で、南西諸島における自衛隊増強に加え、ミサイル基地が次々に配備されつつある。
戦争になった時、まず狙われるのは基地。
基地と住民は一蓮托生。軍は住民を守らない。

沖縄戦の教訓は、決して風化させてはならない。そんな製作陣の意志が込められた映画。
世界及び日本も、保守化・右翼化傾向を強める中で、本作は多くの人が見るべき作品。
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