劇場で3月に観て、本日DVDで2回目。
ブレイク・ライブリーの家に招かれて、小さな身振りで踊っているアナ・ケンドリックの動きだけで、この映画は満点です。
以下2019.3.11のFacebook投稿から転記
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「シンプル・フェイバー」鑑賞
もう最高です。こんな映画を待っていた。
予告篇で「ゴーン・ガール」みたいだなと思っていたけど、観るとこれはノワールというよりは、ロマンティック・スリラーでした。ほら、先日亡くなったスタンリー・ドーネンの後期作品を代表とする、「お洒落なミステリー」ってやつです。
このジャンル、最近ありそうでなかった。
え? 「ツーリスト」は、って? あれはだってさ……(うすら笑い)。
本作は監督がポール・フェイグなんで、シリアスなスリラーではなく、明るいコメディだ。いや、この映画にはやっぱり「ロマンティック・スリラー」という言葉がいちばん似あう。
ストーリーはミステリーに詳しい人ならだいたい先が読める。
「何に似ている」というよりは、物語自体がこのジャンルのクリシェで進行するから。
正直、ほとんど想像した通りにストーリーが進んだ。
が、この作品では、それが全然瑕瑾じゃない。ほら、同じジャンル映画でも、アクション映画には、「お約束をきっちりこなすタイプの傑作」ってあるじゃないですか。「マチェーテ」とか。
そういうタイプの映画。
今回のMVPは文句なしにアナ・ケンドリック。
告白します。実はこれまでこの人が出てくると、「あ~、また出てきちゃったよ。ほかの女優さんのほうがよかったなあ」などと失礼なことを考えてしまうことがあった。何となく苦手だったのだ。
「イントゥ・ザ・ウッズ」ですら、「え~! シンデレラはイメージ違うでしょ」などと思っていたのだ。
ところが本作は。はい、惚れました。なんてキュートなんだ。
今までごめんなさい。もう、最高です。
「ロマンティック・スリラーの主演女優」として、役作りが完璧だった。喋り方とテンポが滅茶苦茶可愛くって、かつ面白い。もう歩いているショットだけでニコニコできる。
共演のブレイク・ライヴリーも好演。何しろ私は「ロスト・バケーション」が大好きなのだが、今回のビッチ役も素晴らしかった。
作品中で「悪魔のような女」に言及するところがあったので、ロマンティック・スリラーであるとともにフレンチ・ノワールも意識しているんだろうけど、思い返してもフランス映画でこんなに明るいノワール(語義矛盾だけど)は思いつかない。
劇伴は1曲だけ英語の曲で、残りはすべて往年のフレンチポップス。特にブリジット・バルドーの歌が多く使われていた。
アメリカ映画とフランス映画は互いに影響されてきた歴史があるけれど、ロマンティック・スリラーというのは、
(1)ワーナーのギャング映画→フレンチ・ノワール→ロマンティック・スリラー
と、
(2)MGMミュージカル→ジャック・ドゥミをはじめとするフレンチ・ミュージカル→ロマンティック・スリラー
という二重の系譜で逆輸入されたものだから、フレンチポップスはそのオマージュなんだと思う。
ちなみに、(1)の下流のかなり近いところにいるのは、昨年のデビッド・ロバート・ミッチェル監督作品「アンダー・ザ・シルバーレイク」。(2)は、スリラーではないけれど、「ラ・ラ・ランド」が延長線上にいる。
今思い出してもニコニコできる。
これは本当に拾い物なので、全力でおススメです!