keith中村

コヴェナント/約束の救出のkeith中村のレビュー・感想・評価

コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)
5.0
 このパターンの原点って、結局「南極物語」なんだよなぁ。
 まあ、奪還するのに失敗するパターンまで含めると、私の生涯ベスト10に入るマイケル・チミノのベトナム戦争映画がそれよりちょっと古いんだけど、実話としてのタロ・ジロはもっと古い。
 
 「キリング・フィールド」も私の世代はリアルタイムだったけど、あれは日本では当時、「インドネシア人をタロ・ジロ扱いしている『上から目線(当時そんな言い回しはないけど)』映画」なんて批判もあった。今じゃ「死ぬまで1001」映画なんだけどね。
 ローランド・ジョフィは怒ってもいいぞ!
 
 っていう系譜にあるのが本作。
 いや~、娯楽作品として面白かったぁ!
 戦争や過酷な現実が織り込まれている作品に「面白い」はどうかとも思うんだけど、そうとしか言いようがない。
 だからか、今日の日比谷もかなりお客さんが入ってた。
 
 あと、本作のクライマックスはがっつりデウス・エクス・マキナなんだけど、ちょっとの工夫でその問題がクリアできてるのが偉い。ほんのちょっとの伏線だけでね。
 伏線というほどじゃない。「言及」くらいね。ご叮嚀に註釈まで出るしね。
 だから、ダムに追い詰められた彼らを見てると、「まだ? 早く来てよ、機械仕掛けの天使!」ってなる。
 
 この手の作品には、一方的にレスキューするとか、片方だけが圧倒的に有利な立場なのが多いんだけど、本作は「前半で死を賭してレスキューされた人物」が、後半で「死を賭してレスキューし返す」という「恩返し作品」ってとこが、両者がイーヴンなので大好き。
 
 アメリカが提示した「馬の鼻先にニンジン」に釣られて協力したインタープリターの大半はこんな僥倖にはあってないんだろうけれど、イギリス人のガイ・リッチーだからこそ、ちょっと客観的にミクロな物語を膨らませた上で、最後に「そうではなかった大半のインタープリターのその後」の字幕で投げかけるというサワーでビターなエンディングにできたんでしょうね。
 
 いやはや、娯楽映画なんて論じたら失礼にすぎるけど、それでも娯楽映画としても傑作なんだからしょうがない!

 「この辺は犬が多いな」
 やっぱガイさん、「南極物語」オマージュか?!←絶対ちげーわwww