三樹夫

ニア・ダーク/月夜の出来事の三樹夫のレビュー・感想・評価

3.3
陽の光、十字架、ニンニク、銀の弾丸、聖水と、弱点多すぎて強いんだか弱いんだかよくわかからない吸血鬼。その中でも陽の光にあたると、という弱点にフューチャーして、骨太ねーちゃんことキャスリン・ビグロー が作ったドラキュラ西部劇恋愛映画。吸血鬼軍団を警察が追って(警察の要素は薄いけど)、それに主人公の父親と妹が追ってという、続・夕日のガンマンや、ノーカントリーと同じ流れような、それの吸血鬼版で、ところどころターミネーター2を思わせるようなシーンがある(作られたのはこっちの方が先だが)。
人体が切断されたり損壊する映画を切り株映画と呼ぶらしいのだが、この映画の切り株要素は、陽の光が体にあたり黒焦げになって、最終的にはフューリーのカサヴェテスやスキャナーズのように爆発する(その二つの映画ほどじゃないけど)というのに心血注がれている。
小さい部屋に閉じこもっての、外からの銃撃で穴が開きどんどん陽の光が入り込んでくるという銃撃戦のシーンは、作っている人間のテンション高さを感じられる、キャスリン・ビグローの骨太シーンであろう。

若者がナンパした美女が実は吸血鬼で、彼女に噛まれたことにより自分も吸血鬼になって、それで恋愛要素が入ってくるんだけど、噛まれるまでの主人公がうざくて、俺はこの映画の恋愛要素にあまり乗れなかった。もうすぐ朝日が昇るかという時にメイにキスしてくれなきゃ車動かさないよとか言って、うざいなこの主人公となった。この映画は吸血鬼の映画だということが予め分かっていて、メイは吸血鬼だろうという予測がついているので、そんな時にンなこと言ってる場合じゃないんじゃ、こいつうぜーとなっちゃったもんで、うざいと思ってしまった奴の恋愛要素にあんまり乗れなかった。
そしてこの映画の主人公がメイの血を飲むシーンは完全にセックスのメタファーだった(吸血シーンは大体そういうものではあるが)。自分では人を殺して血を吸えないので、メイの腕から血をチューチュー吸ってるのは、まるで赤ちゃんがママのオッパイ吸ってるような、あれは授乳プレイみたいなもんだと思っている。
三樹夫

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