KnightsofOdessa

四月の永い夢のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

四月の永い夢(2017年製作の映画)
5.0
[人生とは獲得ではなく喪失の物語だ] 100点(オールタイムベスト1位)

オープニングから泣いていたのは久しぶりなのだが、それ以降もそのテンションを持続して走り切ることが出来た。「イカリエXB-1」を見た後のハイテンションすら蹴散らす大傑作に出会えたことを感謝したい。

この感情をうまいこと文字に出来ないことが悔やまれる。

本作品の中心は朝倉あきとその複雑な感情にあると思う。
物語は憲太郎からの手紙、蕎麦屋の閉店、藤太郎の告白、楓との邂逅によって日常をかき乱された初海が自身の埋めた感情を掘り返し内省することで根源を見つけ、乗り越えるまでを描いている。意外にも楓の話はすぐに退場してしまうのだが、それも見事としか言いようがない気にならなさ。
藤太郎を拒絶したり、教師として復帰出来ないといった感情の根源は、表面的に見れば憲太郎への思いなのかもしれないが、その中には彼から離れることに対する罪悪感や”自分なんかが幸せになるべきではない”といった卑下の感情も含まれており、後者は藤太郎にいい顔だと指摘されたあとの歩道のシーンや電話中に鏡を見たシーンに代表される。この複雑な感情を体現してみせた朝倉あきの表情が本当に素晴らしい。清らかな美しさを湛えた素晴らしい女優だと思う。

四月に囚われた初海を描いた圧倒的オープニングと対になる夏に進んだ初海のシーンは魂が震える。ラストシーンで藤太郎のラジオ投稿を聴いた初海の笑顔は一生忘れない。ありがとう中川龍太郎、ありがとう朝倉あき。