ブタブタ

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法のブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

まずこの真夏の魔法ってダサい副邦題付けた奴は絶対この映画見てないでしょう。
本当にこういうのやめて欲しい。
魔法とか、この映画はそういうのから1番遠いし、そんなファンタジーを徹底的に否定して憎悪すら感じる。

ラストはまるで、というより完全に『少女革命ウテナ・アドレセンス黙示録』だった。
TVアニメ『ウテナ』は時間が停止している永遠のモラトリアムが続く鳳学園=箱庭の世界からウテナは脱出出来ずアンシーだけが脱出した所で終わり、劇場版『アドレセンス黙示録』は二人が脱出して「現実」へと旅立つ所で終わるけど、その外の世界にもまた別の箱庭「城」があって二人は永遠にこの閉鎖された世界から逃れられない事が示唆されておわる。

鳳学園は「生きながら死んでいる」少年少女達を閉じ込めておく巨大な人工の箱庭世界で、それって正に「時間が停止した、いつまでも子供で居られる夢の国」ディズニーランドそのもの。
両方共に閉塞した箱庭の世界。

寺山修司の『田園に死す』のラスト、主人公が自分の故郷である青森の恐山(の近く)にある実家に行くと「新宿区新宿字恐山」のナレーションと共に壁がガラガラ崩れて、実はソレは新宿交差点の広場に作られたセットだと分かって終わるのとは逆に『フロリダ・プロジェクト』は現実に存在する巨大なセット=虚構であるディズニーランドが目の前に立ち上がり現れて、そこへ行って終わってしまう。

ラストでジェンシーがムーニーの手を取って走り出した時、一瞬やった!とカタルシスが訪れれたのも束の間、二人の行く先がディズニーランドのシンデレラ城なのは、もはやこの子らには脱出すべき外の世界もなくて、コレは映画(フィクション)の世界でありながら逆に現実の虚構の世界、閉塞した人工の夢の国へ行ってしまうってもうウテナやその元ネタの寺山修司以上の演劇的演出の虚構世界を、それも「現実」でやってくれたって言う凄さ、皮肉、絶望、色んなものが綯交ぜになった結末だと思う。

あのシンデレラ城もムーニーとジェンシーが辿り着いたところでスタッフで入り口で止められてつまみ出されるだろうし、そう思うとアレは二人にとって永遠に辿り着けないカフカの『城』でもあると思うと余計いたたまれない。
ブタブタ

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