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イカロスのKtoのレビュー・感想・評価

イカロス(2017年製作の映画)
4.8
【説明】2017年公開、第90回アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞

ドキュメンタリー映画監督 ブライアン・フォーゲルが自らの体を張って「ドーピングして自転車競技で成績を上げてみたよん〜」という企画をしている最中に、企画の指南者であるロシア人科学者 グレゴリー・ロドチェンコフがロシア国家に命を狙われることになり、亡命を手助けする…。

ロシアによる国家規模のドーピング不正を暴く、まさに命懸けのドキュメンタリー映画だった。

【感想と考察】
素直に「面白い」と言っていいのかわからない、現在進行形の問題を暴いた恐ろしいドキュメンタリー。
Rotten Tomatoesで93%の高評価で間違いないクオリティ。オリンピック開催時期の今(2022年2月)に観たのもあって、タイムリー過ぎて驚くことに満ちてる…。

当初の企画からかけ離れた方向に事態が動いていくドキュメンタリーといえば、「ザカリーに捧ぐ」「ラッカは静かに虐殺されている」や「SNS 少女たちの10日間」とかが有名だけど、いずれも「これを観ている鑑賞者も告発の一端を担っている」という恐ろしい没入感を与えるよね。そして、イカロスも同様の怖さを感じた。

「国家の陰謀に巻き込まれた科学者」ってフィクション以外にも存在するのかという気持ちになる。かつては腐敗政治の歯車であったロドチェンコフが、単身で亡命しNYタイムス紙にリークするところは完全に政治サスペンス。しかも、現在もロシア当局に命を狙われているという…。

(後日談)
2020年にスポーツ国際大会においてドーピングを画策した者を訴求する権限を認める法律が米国で可決され、「ロドチェンコフ法」と名前がつけられたらしい。選手本人よりも、周囲の人間を取り締まることを目的としているらしく、今も身を潜めて生きているロドチェンコフに対する賛辞も含んでいるようで、少し報われた気持ちになった。
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